マルタン・ベルトー

マルタン・ベルトー（Martin Berteau）

マルタン・ベルトー（1691年2月3日 - 1771年1月22日）は、18世紀フランスで活躍したチェロ奏者、音楽教師、そして作曲家です。彼はフランスにおけるチェロ演奏様式の基礎を築いた人物として広く認められており、「フランス楽派」の創始者と目されています。

生涯

ベルトーの生涯に関する記録には、不確かな情報や誇張された記述が多く含まれており、その実像を正確に把握することは容易ではありません。信頼できる史料は限られています。

若い頃、彼はドイツにおいて、ボヘミア出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者であるコツェッツ（Kozecz）から教えを受けた可能性が指摘されています。本格的なチェリストとしての活動開始時期についても諸説あります。音楽学者フランソワ＝ジョゼフ・フェティスは、ベルトーが1739年のコンセール・スピリチュエルで自作の協奏曲を演奏し、チェリストとして公式にデビューしたと記しています。しかし、この記録を裏付ける同時代のメディア報道はなく、演奏されたとされる協奏曲の楽譜も発見されていないことから、この記述の信憑性は疑問視されています。

彼の演奏活動に関する確かな記録として挙げられるのは、哲学者のジャン＝ジャック・ルソーが1753年にパリでベルトーのチェロ演奏を聴いたという証言のみです。晩年はアンジェで過ごし、1771年に同地でその生涯を閉じました。

作品

ベルトーが作曲した作品の多くは残念ながら散逸しており、現在まで伝わっているのはわずかなチェロソナタに限られています。彼の作品の中でも比較的知られているチェロソナタ ト長調 作品25は、長年にわたりイタリアの作曲家ジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニの作品であると誤って attribution されていました。

ベルトー作とされる主要作品には以下のようなものが挙げられます。

チェロ独奏と通奏低音のための6つの室内ソナタ 作品1 （1748年）
チェロと通奏低音のためのベルトー氏の4つのソナタ （1759年）
チェロ独奏と通奏低音のための6つの室内ソナタ 作品2 （1767年）
2つのヴァイオリンとチェロのためのトリオ・ソナタ （1750年と1753年にコンセール・スピリチュエルで演奏されたとされますが、散逸しています）
* チェロと管弦楽のための4つの協奏曲 （フェティスがコンセール・スピリチュエルでの演奏に言及し、古い目録にも記載がありますが、散逸または存在が疑われています）

教育活動

マルタン・ベルトーは、教育者としても極めて重要な人物でした。彼の門下からは、多くの優れたチェロ奏者が輩出され、フランスのみならずヨーロッパ各地で活躍しました。主な弟子には、フランス王太子ルイ・フェルディナン、バレンシア出身の兄弟チェリストであるジャン＝バティスト・ジャンソン（1742年-1804年）とルイ・オーギュスト・ジョゼフ（1749年-1815年）、ジャン＝ピエール・デュポール（1741年-1818年）、作曲家としても知られるフランソワ・キュピス・ド・ルヌサール、そして最後の弟子であったとされるジャン＝バティスト・ブレヴァルらがいます。彼の指導法は、フランスにおけるチェロ演奏の技術や表現様式の基礎を確立し、後世の発展に大きく貢献しました。

評価

ベルトーの生涯や作品には不明瞭な点が多く残されていますが、チェロ演奏におけるフランス楽派の創始者としての歴史的な重要性は揺るぎません。彼の確立した演奏スタイルと、彼によって育成された多くの弟子たちが、その後のフランスにおけるチェロ音楽の隆盛を支えました。彼の現存する作品は少ないものの、当時のチェロ音楽の発展を示す貴重な資料となっています。

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