マルダーンシャー (サーサーン朝の王子)

マルダーンシャーは、7世紀のサーサーン朝の王子であり、その短い生涯は悲劇に彩られています。彼は、サーサーン朝の君主であるホスロー2世（在位590年 - 628年）と、彼の愛妾であるシーリーンの間に生まれました。ホスロー2世は多くの妻と妾を持っていましたが、シーリーンは特に寵愛を受け、マルダーンシャーもまた、父王の寵愛を受けて育ちました。

当時のサーサーン朝は、東ローマ帝国との長きにわたる戦争によって国力が疲弊していました。ホスロー2世は、その治世において領土を拡大し、一時的に帝国の版図を最大化しましたが、その過程で多くの犠牲を払い、国内の不満を高めていました。そのような状況下で、後継者争いは避けられない問題でした。

ホスロー2世には、正妻との間に生まれた息子であるシェーローエがいました。しかし、ホスロー2世はシェーローエを差し置いて、マルダーンシャーを後継者に指名しました。この決定は、当然ながらシェーローエとその支持者たちの不満を招きました。王位継承は、単なる個人の問題ではなく、帝国の安定を左右する重要な要素であったため、後継者指名は政争の火種となりました。

628年、ついにクーデターが発生し、シェーローエが新たな皇帝として擁立されました。ホスロー2世は捕らえられ、処刑されました。そして、マルダーンシャーもまた、兄弟たちと共に処刑されたのです。マルダーンシャーは、父王の寵愛を受けながらも、政争の犠牲となり、若くして命を落とすことになりました。

マルダーンシャーの生涯は、サーサーン朝末期の混乱と衰退を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。王位継承をめぐる争いは、帝国の内部分裂を招き、その後のアラブ人による征服を容易にする一因となりました。マルダーンシャーの短い生涯は、サーサーン朝の栄光と没落を物語る悲劇的なエピソードとして、歴史に刻まれています。

参考文献
Pourshariati, Parvaneh (2008). Decline and Fall of the Sasanian Empire: The Sasanian-Parthian Confederacy and the Arab Conquest of Iran. London and New York: I.B. Tauris.
Howard-Johnston, James (2010). "Ḵosrow II". Encyclopaedia Iranica, Online Edition.

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