マルティン・グロピウス

マルティン・グロピウス

ドイツの建築家、マルティン・グロピウス（Martin Gropius, 1824年8月11日 - 1880年10月13日）は、著名なモダニズム建築家でバウハウス初代校長を務めたヴァルター・グロピウスの大伯父にあたる人物です。19世紀後半のドイツ建築界において、教育者や研究者としても重要な足跡を残しました。

生涯と教育

グロピウスはベルリンに生まれ、高等建築学校で専門的な学びを深めました。卒業後は、独立して私建築家としての道を歩み始めます。建築思想においては、カール・フリードリッヒ・シンケルやカール・ベティッヒャーといった当時の有力な建築家や理論家から強い影響を受けました。さらに、自身の視野を広げるため、ギリシャやイタリアへの長期旅行を敢行し、古典建築やルネサンス建築に触れることで、その知識と感性を磨きました。これらの経験は、後の彼の作品に深く反映されることになります。

経歴

建築設計の実務に携わる傍ら、グロピウスは教育分野でも貢献しました。1856年からは実業学校で教壇に立ち、後進の指導にあたります。その学識と業績が認められ、ベルリン科学院およびウィーン科学院の会員に任命されました。また、美術学校の校長を務めるなど、建築教育および芸術教育の振興にも尽力しました。晩年まで精力的に活動を続け、生地であるベルリンで1880年にその生涯を閉じました。

主要な業績と建築様式

マルティン・グロピウスの建築活動は多岐にわたり、病院、大学、博物館、コンサートホールなど、公共建築から個人邸宅まで様々な建物を手掛けました。彼のスタイルは、新古典主義や歴史主義、特にイタリア・ルネサンス様式からの影響が顕著に見られます。

代表的な作品としては、以下のような建築物が挙げられます。

ノイシュタット＝エーバースヴァルデの精神病院 (Psychiatrische Anstalt in Neustadt-Eberswalde)
ベルリン・フリードリヒスハイン病院 (Krankenhaus Berlin-Friedrichshain, 1868年-1874年)
ヴィースバーデン病院 (Krankenhaus in Wiesbaden)
キール大学校舎 (Universitätsgebäude in Kiel, 1873年-1876年)
ベルリン・テンペルホーフ陸軍病院 (Militärkrankenhaus in Berlin-Tempelhof, 1875年-1877年)
ベルリン工芸美術館 (Kunstgewerbemuseum in Berlin, 1877年-1881年)：イタリアのルネサンス宮殿を模した風格ある建築。彼の死後、1881年に完成。現在は彼の名を冠し「マルティン・グロピウス・バウ」として知られ、大規模な特別展の会場として広く利用されています。
* ライプツィヒの新ゲヴァントハウス (Neues Gewandhaus in Leipzig, 1882年-1884年)：有名なコンサートホール。この建物もグロピウスの死後にハイノ・シュミーデンによって完成されました。しかし、第二次世界大戦中の被害により失われ、残念ながら現存していません。

これらの主要建築物のほかにも、グロピウスの設計に基づき、当時の隆盛を誇ったベルリン周辺には数多くの瀟洒な建物やヴィラが建設されました。例えば、リューツォウ・ウーファーのヘーゼ邸（Heesesche Villa）、シャルロッテンブルクのブライヒレーダー邸（Bleichrödersche Villa）、メンデルスゾーン邸（Mendelssohn-Haus）、グルーナー邸（Gruner-Haus）、レッシング邸（Lessing-Haus）などが知られています。

マルティン・グロピウスは、ヴァルター・グロピウスという後の巨匠に連なる系譜にあるだけでなく、19世紀後半のドイツにおける建築の発展に、実務、教育、理論の両面から貢献した重要な建築家として記憶されています。

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