マルベリー・ストリート (マンハッタン)

マルベリー・ストリート：ニューヨーク、リトル・イタリーの歴史と文化が息づく通り

マルベリー・ストリートは、ニューヨーク市マンハッタン区を南北に走る通りです。かつてはイタリア系アメリカ人の文化が色濃く、リトル・イタリーの中心として知られていました。

歴史

開通時期は不明ですが、1755年以降の地図には既にその名が記されています。通りの南端付近が大きく曲がっているのは、かつて存在したコレクト・ポンドという池の湿地帯を避けるためでした。アメリカ独立革命時代には、「スローターハウス・ストリート（屠殺場通り）」と呼ばれていました。これは、1784年までマルベリー・ストリートとベイヤード・ストリートの交差点にあった屠殺場に由来します。

マルベリー・ストリートとオレンジ・ストリート（現：バクスター・ストリート）に囲まれたマルベリー・ベンドは、悪名高いスラム街ファイブ・ポインツの一部でした。ファイブ・ポインツは、マルベリー・ストリートの他にアンソニー・ストリート（現：ワース・ストリート）、クロス・ストリート（現：モスコ・ストリート）、オレンジ・ストリート、リトル・ウォーター・ストリートで構成されていました。

場所

マルベリー・ストリートは、バクスター・ストリートとモット・ストリートの間に位置しています。モット・ストリートと並行してリトル・イタリーの中心を貫き、北はノーホーのブリーカー・ストリート、南はトライベッカのワース・ストリートに続いています。通りの南端付近はチャイナタウンに入り、八百屋、肉屋、魚屋などが軒を連ねています。ベイヤード・ストリートとワース・ストリートの間には、1897年に建設されたコロンバス・パークがあります。

マルベリー・ベンド

マルベリー・ストリートが屈曲するマルベリー・ベンドには、かつて桑の木が並んでいました。スクリブナーズ・マガジンは、マルベリー・ベンドについて「マルベリー・ストリートの狭い曲がり角で、背の高い長屋が立ち並ぶ曲がりくねった渓谷。人々で溢れ、歩道から通りのほぼ中央まで広がっている。歩道と側溝は商売人のスタンドで占拠されている」と描写しています。

ジャーナリストで写真家のジェイコブ・リースは、ニューヨーク最悪のスラム街であったマルベリー・ベンドの治安改善に尽力しました。彼の写真集『The Battle with the Slum』には、公園が整備された明るい表通りと、依然として暗い路地裏の対比が写されており、治安向上を訴えました。リースの活動を受けて、ニューヨーク市は1890年代にスラム街を買収し、公園へと作り替えました。

著名な建物

マルベリー・ストリート沿いには、パック・ビルディング（ハウストン・ストリートとの交差点）、セント・パトリック旧大聖堂（プリンス・ストリートとの交差点）、モースト・プレシャス・ブラッド教会（113バクスター・ストリート）などがあります。モースト・プレシャス・ブラッド教会は、イタリア移民によって建設されました。

文化

1896年、ニューヨーク・タイムズはリトル・イタリー/マルベリー地区の特徴を伝える記事を掲載しました。「彼らは労働者であり、あらゆる手作業に従事する人々である。職人であり、廃品回収業者であり、屑拾いもいる。イタリア人の巨大なコミュニティは、ラテン系商業コミュニティと呼べるだろう。あらゆる種類の店、食料品店、果物屋、仕立て屋、靴屋、ワイン商人、楽器製造業者がある。公証人、弁護士、医師、薬局、葬儀業者もいる。イタリア人には、市内のドイツ人を除くどの外国人よりも多くの銀行家がいる。」

サン・ジェナーロ祭

毎年9月には、イタリア系アメリカ人の祭りであるサン・ジェナーロ祭が11日間にわたって開催されます。マルベリー・ストリート全体が会場となり、期間中は車両通行止めとなります。サン・ジェナーロ祭は1926年に始まりました。

ポップカルチャー

マルベリー・ストリートは、文学、映画、音楽など、様々なポップカルチャー作品の舞台となっています。

文学：『マルベリーどおりのふしぎなできごと』(ドクター・スース)
映画：『フェイク』、『ギャング・オブ・ニューヨーク』
音楽：ビリー・ジョエルの『ビッグ・マン・オン・マルベリー・ストリート』、ローズ・オブ・ブルックリンの『ザ・バッド・ラケット』
テレビドラマ：『セックス・アンド・ザ・シティ』、『エイリアニスト』

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