マンガル・ショブハジャトラ

マンガル・ショブハジャトラ：希望と平和の行進

マンガル・ショブハジャトラ（Mangal Shobhajatra）は、バングラデシュで毎年ベンガル新年の初日に開催される、壮大でカラフルなパレードです。1989年に始まったこの行進は、2016年にはユネスコ無形文化遺産に登録され、国際的な注目を集めています。単なるお祭り行事ではなく、バングラデシュの歴史、文化、そして人々の精神性を深く反映した、重要な文化的イベントと言えるでしょう。

困難な時代からの出発

1970年代後半から1980年代にかけてのバングラデシュは、軍事政権の支配や、政教分離の否定、度重なる自然災害など、数々の困難に直面していました。特に1980年の大洪水は、国民に大きな苦しみをもたらしました。このような厳しい状況の中、ダッカ大学美術学部の学生たちは、創造性を活かし、人々に希望を与える方法を探し求めていました。

希望の灯をともす行進

学生たちは、1989年のベンガル新年、人々に希望と喜びを与えるため、色鮮やかなパレードを開催することを決意しました。これが、マンガル・ショブハジャトラの始まりです。「マンガル・ショブハジャトラ」とはベンガル語で「幸福のための行進」を意味し、その名のとおり、パレードは人々の心に希望の光を灯す存在となりました。

パレードの内容と意義

マンガル・ショブハジャトラは、ダッカ大学美術学部の教員や学生を中心に組織されていますが、参加者は大学関係者に留まらず、多くの人々が集います。鳥や動物、魚などをモチーフにした巨大な模型が特徴的で、中には高さ6メートルにも達するものもあります。これらの模型は、悪を象徴するもの、勇気や強さを象徴するもの、そして平和を象徴するものの3つのカテゴリーに分類され、それぞれが深い意味を込めて作られています。学生たちは、毎年3月からこれらの模型の作成に取り組み、ベンガル新年への準備を進めていきます。

このパレードは、単なる祝祭行事にとどまりません。半世俗主義的な軍事政権への抵抗運動として始まった歴史を持つマンガル・ショブハジャトラは、バングラデシュの人々の世俗主義への強い意志と、多様な宗教や文化の共存を象徴するイベントとして、大学関係者らによって位置づけられています。ユネスコも、この行進の平和と共存を訴える意義を高く評価しています。

ユネスコ無形文化遺産登録

マンガル・ショブハジャトラの文化的意義は、バングラデシュ国内にとどまりませんでした。2014年、バングラアカデミーは、ダッカ大学関係者の協力のもと、ユネスコ無形文化遺産への登録申請を行いました。そして2016年、エチオピアのアディスアベバで開催されたユネスコ政府間委員会において、マンガル・ショブハジャトラは見事、無形文化遺産の代表一覧表に登録されました。これは、この行進の文化的価値が世界的に認められたことを意味します。

未来への継承

マンガル・ショブハジャトラは、単なる過去の遺物ではありません。現在も毎年、多くの人々が参加し、その伝統は未来へと受け継がれています。このパレードは、バングラデシュの人々の希望、平和への願い、そして多様な文化の共存を象徴する、力強いイベントであり続けるでしょう。その輝きは、これからも人々の心に灯をともし続けるに違いありません。

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