マンガン乾電池

マンガン乾電池：概要と特徴

マンガン乾電池は、一次電池の一種であり、正極活物質として二酸化マンガンを使用する電池です。ルクランシェ電池とも呼ばれ、英語ではZinc-carbon battery（亜鉛-炭素電池）として知られています。安価で入手しやすく、長期間保存できることから、低消費電力機器への利用が一般的です。

電池構造と種類

マンガン乾電池は、正極に二酸化マンガン、負極に亜鉛、電解液に塩化亜鉛（一部製品では塩化アンモニウム）を使用します。二酸化マンガンと塩化亜鉛は黒色のペースト状で、電池容器に充填されています。正極には集電用の炭素棒が配置されています。

電解液の種類により、EMDタイプ2（塩化アンモニウム使用）とEMDタイプ3（塩化亜鉛使用）に分類されます。EMDタイプ2は製造工程で水が発生しやすく液漏れしやすいのに対し、EMDタイプ3は水を消費するため、液漏れのリスクが低くなっています。

性質と用途

マンガン乾電池はアルカリ乾電池に比べて容量は小さいものの、休止後に電圧を回復する性質を持ちます。また、価格が安価であることから、リモコン、時計、懐中電灯、ラジオなど、低電流で間欠的に使用する機器に適しています。液漏れしても毒性が低い弱酸性電解液であるため、玩具にも使用されますが、目に入らないように注意が必要です。

近年はアルカリ乾電池の高性能化により、液漏れ耐性においてアルカリ乾電池の方が優れている場合もあります。

サイズと形状

マンガン乾電池は、円筒形（単1～単5）や角型（6F22など）など、様々なサイズと形状で製造されています。角型電池は、内部に複数の小型電池を直列に接続した積層電池です。6F22電池は、6個のF22電池を直列接続して9Vを出力します。過去には、より高電圧の積層電池も存在しましたが、現在は生産が終了しています。

第二次世界大戦前に規格化されていた大型電池（平角3号、平角5号など）も存在し、一部は現在も通信用乾電池として生産されています。これらの大型電池は、電気柵電源や工事警告灯など特殊な用途にも使用されます。

品質ランク

一般的に市販されているマンガン乾電池には、性能ランクがあります。標準（S：緑）、高容量（C：青）、高出力（P：赤）、超高性能（PU：黒）の4ランクがあり、ランクが上がるにつれて、二酸化マンガンの量や電解液の成分が変更され、性能と重量が変わります。外装方法も金属外装、熱収縮チューブ外装、紙巻き外装など様々です。ランクが低いほど外装が簡素化され、軽量化されます。近年は金色外装の極超高性能品も存在しますが、これは事実上アルカリ乾電池に相当します。

外装

マンガン乾電池の外装方法は多様で、古くはボール紙巻きが主流でしたが、現在は金属外装が一般的です。金属外装は液漏れしにくい構造ですが、安価な製品では紙巻きやPVC熱収縮、シール外装が用いられることもあります。樹脂外装は一部製品に限定されています。

電圧と規格

マンガン乾電池の公称電圧は、円筒形が1.5V、6F22が9.0Vです。初期電圧はこれより高く、放電が進むにつれて電圧は低下します。規格形式は、円筒形を「R」、角型を「F」で表し、その後ろにサイズを表す数字を付けます。マンガン乾電池は、最初に普及した乾電池であるため、特定の記号は存在せず、サイズ表記のみで区別されます。アルカリ電池には「L」が付きますが、マンガン電池には「L」は付きません。末尾には、S、C、P、PUなどの性能ランクを表す文字が付加されます。

国内ブランドと生産状況

かつては多くの国内メーカーがマンガン乾電池を生産していましたが、現在はパナソニック、東芝、FDK、三菱電機などが主なメーカーです。2008年には国内生産が終了し、現在は海外生産品が主流となっています。そのため、従来の販売ルートでは入手しづらくなっており、ECサイトや100円ショップなどで入手することが多くなっています。

JIS固有符号

国内生産時には、JIS C 8501に製造会社の固有符号が付与されていました。この符号により、OEM製品であっても製造元を特定できます。

使用上の注意点

マンガン乾電池は、過放電すると亜鉛缶が侵食され、液漏れを起こす可能性があります。長期間使用しない場合は機器から取り外すことが推奨されます。また、極性が逆の電池を混ぜて使用すると、異常な化学反応を起こし、破裂や液漏れのリスクがあります。異なるメーカーの電池を混ぜて使用すると、保証を受けられない場合があるので注意が必要です。高出力機器には使用できない場合もあります。

参考文献

西村昭義：著『電池の本　改訂版』(ISBN 978-4789811859) CQ出版社 1992年

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