マーキュリー (自動車)

マーキュリー（Mercury）について

マーキュリーは、アメリカのフォード・モーター社が1938年から生産を開始した自動車ブランドです。このブランドは、大衆車ブランドのフォードと高級車ブランドのリンカーンの中間に位置し、中級から準高級にかけての車両を展開していました。ブランド名は、ローマ神話の商業神メルクリウスに由来していますが、その豊かな歴史と共に、2010年には最終モデルが生産され、70年以上の歴史に幕を閉じることとなりました。

ブランド設立の背景と歴史

1930年代まで、フォード・モーター社には大衆車ブランドのフォードと高級車ブランドのリンカーンの2つしか存在していませんでした。しかし、競合のゼネラルモーターズ（GM）は中級車ブランドを複数展開しており、この市場での競争力を高める必要がありました。特に、GMの「ビュイック」は、その成功を収めており、フォードも中級車ブランド「マーキュリー」の立ち上げを決断しました。

1938年6月には新ブランド名が発表され、マーキュリー・エイトというモデルが登場。そのデザインはフォードの拡大版であり、当時のフォードの特徴的なV型8気筒エンジンを搭載していました。外観は、曲面を使った洗練されたものとなり、高速性能は十分でした。

マーキュリーとリンカーン

マーキュリーは最初、フォードの上級ブランドとして位置づけられていましたが、次第にリンカーンの弟分としての性格を強めました。1945年にはマーキュリーとリンカーンが統合されて「リンカーン・マーキュリー部門」が設立され、その後もこの体制がブランド消滅まで続きました。

1950年代の好景気を背景に販売台数は伸びましたが、1960年代には販売戦略が変更され、特徴的なデザインのスペシャリティーカー「クーガー」が導入され、さらなる差別化を図りました。しかし、1970年代のオイルショックや日本車との競争激化によって状況が一変しました。

不振とブランドの終焉

その後も、マーキュリーは「フォードの兄貴分」と「リンカーンの弟分」の間で苦しみました。1990年代には高い販売成績を上げていましたが、2000年代に入るとその数は急減し、ブランドとしてのアイデンティティを失いました。最終的に、2010年にブランドの閉鎖が発表され、最後のモデルが生産されると、その歴史は終焉を迎えました。

マーキュリーの車種

マーキュリーは様々な車種を展開しましたが、ほとんどはフォードの車両のバッジエンジニアリングによるものでした。一部には独特なデザイン要素もありましたが、外観の違いはエンブレムやグリル、ヘッドライト程度のものが多かったです。主な生産終了車種には、ボブキャット、カプリ、クーガー、グランドマーキーなどがありました。これらの車はフォードと連動性が高く、同じプラットフォームを使用していました。

マーキュリーは、その中間的な位置づけにより、フォードとリンカーンの間で独自の存在感を持っていましたが、最終的にはそのブランドの特徴を発揮することができず、惜しまれつつも消えゆく運命となったのです。

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