マーク・ハットフィールド

マーク・オダム・ハットフィールド：平和を希求したオレゴン選出の政治家

マーク・オダム・ハットフィールド（Mark Odom Hatfield, 1922年7月12日 - 2011年8月7日）は、アメリカ合衆国の政治家であり、オレゴン州の輝かしい歴史を彩った人物です。彼は、第16代オレゴン州州務長官、第29代オレゴン州知事、そしてオレゴン州選出の連邦上院議員を歴任しました。所属政党は共和党でしたが、その信念に基づいた行動は、しばしば党派を超えた共感を呼びました。

生い立ちと軍歴

1922年、オレゴン州ダラスで生を受けたハットフィールドは、ウィラメット大学で学士号を取得後、第二次世界大戦に海軍士官として従軍しました。太平洋戦線では硫黄島や沖縄での激戦を経験し、終戦直後には広島を訪問するという、貴重な経験をしています。

戦後、スタンフォード大学大学院で政治学を専攻し、修士号を取得。その後は母校ウィラメット大学で政治学の助教授として教鞭を執りました。

政界での活躍

1950年、ハットフィールドは大学で教鞭を執る傍ら、オレゴン州下院議員に立候補し、見事当選を果たします。その後、1955年にオレゴン州上院議員に転身するまで、州下院議員としてその手腕を発揮しました。1956年にはオレゴン州州務長官に当選し、1957年から1959年までその職を務めました。州務長官就任に伴い、ウィラメット大学助教授は辞任しています。1958年にはオレゴン州知事に当選し、1962年に再選。オレゴン州では20世紀で初めて2期務めた知事となりました。

1966年、州知事としての3選を目指さず、上院議員選挙に立候補し、当選。以降、5期連続当選という偉業を成し遂げました。

平和主義者としての信念

ハットフィールドは、共和党穏健派の中でも異色の議員として知られる平和主義者でした。敬虔なクリスチャンであり、上院での反戦活動は彼の代名詞とも言えます。ベトナム戦争時には、ジョージ・マクガヴァンやユージーン・マッカーシーらと共に、議会での反戦運動を主導しました。湾岸戦争にも反対するなど、安全保障問題においては一貫して独自の立場を貫きました。また、核軍縮運動にも熱心に取り組み、1982年にはエドワード・ケネディ上院議員との共著で核凍結を訴えました。中国のチベット支配に反対し、ダライ・ラマ14世がオレゴン州ポートランドで演説した際には、紹介役を務めるなど、人道的な問題にも積極的に関与しました。

一方で、妊娠中絶などの社会問題では保守的な姿勢を示すこともありました。上院では予算（歳出）委員長（1981年 - 1987年、1995年 - 1997年）などを歴任し、環境保護にも熱心なことでも知られていました。

1996年の上院議員選挙には立候補せず、政界を引退。彼は、選挙で一度も落選したことのない、稀有な政治家でした。

反戦の姿勢で知られたハットフィールドですが、テロとの戦いを強く支持し、2004年アメリカ合衆国大統領選挙ではジョージ・W・ブッシュ大統領への支持を表明するという、意外な一面も見せました。

1995年にはメアリー・ウッダード・ラスカー公益事業賞を受賞。在任中は日米間の経済交流に尽力し、2003年には日本政府から勲一等瑞宝章を授与されました。

引退後の活動と遺産

政界引退後は、ポートランド州立大学で教授を務めました。彼の功績を称え、ポートランド州立大学とオレゴン州立大学には、ハットフィールド研究所が創設されています。

2011年8月7日、ハットフィールドは病気のため、89歳でその生涯を閉じました。彼の平和への願いと、人道的な行動は、今もなお多くの人々の心に深く刻まれています。

マーク・ハットフィールドは、オレゴン州、そしてアメリカ合衆国にとって、かけがえのない政治家でした。

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