マーシー (T-AH-19)

アメリカ海軍病院船「マーシー」

マーシー（USNS Mercy, T-AH-19）は、アメリカ海軍が運用するマーシー級[[病院船]]のネームシップであり、同名の艦としては3隻目にあたります。この病院船は、ジュネーブ協定に基づき、乗員を含めいかなる火器も搭載していません。船体は、高い前甲板、トランサム船尾、球状船首、拡張されたデッキハウス、航空管制システムを備えたヘリコプター甲板を特徴としています。

艦歴

1976年、マーシーは当初、石油タンカー「ワース（SS Worth, MA-299）」として、カリフォルニア州サンディエゴのナショナル・スティール・アンド・シップビルディング社で建造されました。その後、海軍がこの船を取得し、1984年7月に「マーシー」と改名。病院船への改造を経て、1985年7月20日に進水、1986年11月8日に就役しました。

マーシーの主な任務は、アメリカ軍の陸上展開部隊や上陸作戦部隊に対する医療支援です。また、平時には政府機関からの要請に基づき、災害被災者や人道支援を必要とする人々への医療活動も行います。

1987年2月27日、マーシーはフィリピンと南太平洋へ向け、演習と人道支援活動のため航海を開始。この航海には、アメリカ海軍、陸軍、空軍の現役兵と予備役兵が参加し、フィリピンの7つの港と南太平洋の7つの港で、62,000人以上の外来患者と約1,000人の入院患者を治療しました。同年7月13日、マーシーはカリフォルニア州オークランドに帰還しました。

1990年8月9日、マーシーはオペレーション・デザート・シールドに参加し、8月15日に出港、9月15日にペルシャ湾に到着しました。その後6ヶ月間、多国籍軍に対して医療支援を行い、690人の患者を受け入れ、300件の手術を実施。また、21人のアメリカ兵と2人のイタリア兵の捕虜も治療しました。1991年3月16日にはペルシャ湾を出航し、4月23日にオークランドへ帰還しました。

母港をカリフォルニア州サンディエゴとするマーシーは、平時には縮小された人員で運用され、残りの乗員はサンディエゴの海軍医療センターに勤務しています。

2005年1月5日には、スマトラ島沖地震の津波被害者支援のため、アメリカ軍によるユニファイド・アシスタンス作戦の一環としてサンディエゴを出港しました。

2006年以降、マーシーは数年に一度、アメリカ海軍の「パシフィックパートナーシップ」活動に参加し、数ヶ月にわたる航海を行っています。これらの活動では、南太平洋、東南アジア諸国、ミクロネシアの島々で人道的医療、歯科医療、工学的支援を提供し、地域の軍、政府、災害救援活動中の人道支援団体の相互運用性を向上させる活動を実施しています。

2018年6月10日には、日本政府の招致により横須賀に寄港。これは、災害発生時の医療拠点としての船舶活用を検討する日本政府によるものでした。6月14日には海上自衛隊の自衛艦隊司令部、潜水医学実験隊、潜水艦救難艦「ちよだ」、米海軍第7艦隊司令部なども参加した日米衛生共同訓練を実施しました。また、6月16日には東京・大井ふ頭で一般見学会と報道陣への公開が行われました。

2020年には、アメリカ国内での新型コロナウイルス感染拡大を受け、マーシーは3月27日までにロサンゼルスに到着し、新型肺炎患者のためのベッドを確保するため、肺炎以外の患者の移送と療養に使用されました。

艦内設備

マーシーは、高度な医療設備を備え、1000名の患者を収容することが可能です。

• - 集中治療病床：80床
• - 回復病床：20床
• - 中間ケア病床：280床
• - 軽傷病床：120床
• - 限定ケア病床：500床
• - 手術室：12室

その他、以下の部門と設備を備えています。

• - 負傷者受付
• - 放射線サービス
• - メイン及びサテライトラボ
• - 中央滅菌室
• - 医療用電源/薬局
• - 理学療法と火傷ケア
• - 集中治療室
• - 歯科サービス
• - 視力測定/レンズラボ
• - 遺体安置所
• - ランドリー
• - 酸素生成装置

これらの設備により、マーシーは広範囲な医療ニーズに対応することができ、災害時や紛争時における重要な医療支援拠点として機能しています。

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