マーストリヒト包囲戦 (1676年)

マーストリヒト包囲戦 (1676年)

1676年7月6日から8月27日にかけて、仏蘭戦争中にオラニエ公ウィレム3世によって行われたマーストリヒトの包囲戦は、ネーデルラント連邦共和国（オランダ）の命運を左右する重要な戦いでした。

背景

1672年、イングランドとフランスがオランダに宣戦布告し、オランダは洪水線を利用して敵の進軍を阻止しました。しかし、国内ではヨハン・デ・ウィットとコルネリス・デ・ウィット兄弟が殺害され、第一次無総督時代が終結するなど、混乱が続いていました。その翌年、フランス王ルイ14世とヴォーバン率いるフランス軍は、わずか2週間で要塞都市マーストリヒトを攻略し、フランスに併合しました。

1674年、イングランド、ミュンスター司教領、ケルン選帝侯領が相次いでオランダと講和しましたが、フランスは対オランダ戦争を継続しました。同年8月、スネッフの戦いでは、ウィレム3世率いるオランダと神聖ローマ帝国の連合軍がフランス軍と戦いましたが、決着はつきませんでした。1675年6月、ルイ14世はマーストリヒトの防御工事を視察し、オランダとスペインの連合軍による攻撃を警戒しました。

包囲

1676年夏、ウィレム3世はマーストリヒト奪還を目指し、スペイン領ネーデルラント総督の支持を得て、7月6日にオランダとスペインの連合軍がマーストリヒトに到着しました。ウィレム3世は、イングランド軍、ブランデンブルク選帝侯領、プファルツ＝ノイブルク公領の軍勢と共に包囲軍を率いました。

しかし、準備の遅れから砲撃開始は到着から2週間後の7月21日となりました。ウィレム3世は、要塞の北西部にあるボスヘ・フロンテンに攻撃を集中し、8月初旬にはル・ドーファンという半月堡を占領しましたが、1,000人もの死傷者を出しました。その1週間後にはラ・レーヌという角堡を攻撃しましたが失敗し、カール・フローレンティン・ツー・ザルムが戦死しました。

一方、ルーヴィニ侯爵はウィック近郊で陽動攻撃を行い、南西部でイェーケル川とマース川の間にあるデ・コメン地区を攻撃しました。デ・コメンの守備軍は近辺を浸水させましたが、ルーヴィニ侯爵は水をマース川まで誘導することに成功しました。

ナイメーヘンでは講和交渉が進められていましたが、マーストリヒト市長のゴドフロワ・デストラードによって遅延させられていました。ヴァルデック将軍は、ミュンスター司教やブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル公を説得してウィレム3世を支持させようとしましたが、ホラント州の説得に失敗しました。

8月17日、ウィレム3世はフランスの救援軍が接近していることを知り、ヴァルデックに伝えました。ヴァルデックは翌日にマーストリヒトに向けて進軍しましたが、8月27日にフランスの救援軍が接近したため、包囲を解かざるを得ませんでした。撤退の間にもフランス軍がマーストリヒトに補給を送ったり、残りの同盟軍が攻撃を続けたりしましたが、結局両軍が決戦しないまま同盟軍が撤退しました。

包囲の敗因については、同盟軍の政府の指導力不足やマーストリヒト住民の協力、そしてマース川の水位低下による装備輸送の困難などが指摘されています。

影響

包囲が失敗したため、マーストリヒトはナイメーヘンの和約が締結されるまでフランス軍に占領されることとなりました。フランス軍は撤退時にリヒテンベルフ城を破壊しました。

マーストリヒト包囲戦は、仏蘭戦争における重要な局面であり、その戦略と結果は、後のヨーロッパの勢力図に大きな影響を与えました。

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