ケルン選帝侯領

ケルン大司教 選帝侯領

ケルン大司教選帝侯領（ドイツ語: Kurfürst von Köln）は、953年から1803年まで神聖ローマ帝国の選帝侯、司教領主であった領域です。ケルン大司教選帝侯は、マインツ選帝侯に次ぐドイツにおけるカトリック教会の高位聖職者であり、広大な領土を保有していました。15世紀までは、選出された国王に戴冠する職務を担っていました。

1801年、ナポレオンによって全領土を割譲し、選帝侯の地位を喪失。選帝侯領は消滅し、大司教領としてのみ存続しましたが、1803年の帝国代表者会議主要決議により世俗化され、領土の大部分はプロイセン王国に、残りはヘッセン＝ダルムシュタット、ナッサウ公国などに分割され消滅しました。

ケルンは、ローマ帝国の属州都市「コロニア・アグリッピネンシス」として発展しました。後に「アグリッピネンシス」が省略され「コロニア」と呼ばれるようになり、それが訛ってケルンという地名になったとされています。

ケルンは、ローマからキリスト教が早く伝来した地であり、313年のミラノ勅令により司教座が設置されました。8世紀末には大司教座に昇格し、同時に領地は大司教領となりました。6世紀末から13世紀末にかけて、ケルン司教（大司教）はフランク王国、東フランク王国、神聖ローマ帝国の宮廷と密接な関係を持ちました。

ケルン大司教を領主とする聖職領邦は、大司教座附属学校を中心にライン川流域の政治・文化の中心地として発展しました。また、ドミニコ会が設立したケルン大司教区付属神学校では、アルベルトゥス・マグヌスやマイスター・エックハルトなど中世の重要な思想家が講義を行い、トマス・アクィナスなどが学びました。これらの学校はドイツ神秘主義思想の発展に大きく貢献し、1388年にはケルン大学が創立されました。

1198年、ローマ教皇インノケンティウス3世は、ローマ王位を巡るヴェルフ家とホーエンシュタウフェン朝の争いに対し、ケルン大司教を事実上の選帝侯に昇格させました。1356年、皇帝カール4世が金印勅書を発布し、大司教は正式に選帝侯となりました。1457年、ケルン市は帝国自由都市となり、大司教選帝侯の新たな首都はボンに移されました。

15世紀まで、選出された国王に帝冠を戴冠するのはケルン大司教選帝侯の職務であり、また、ケルン大司教選帝侯はイタリア王国の大書記官長でしたが、時代が進むにつれてその官位は形式的なものとなりました。

1500年、ケルン大司教選帝侯領は、帝国クライスの一つであるクールライン・クライスを構成する領邦となりました。クールライン・クライスは、構成する10領邦のうち4つが選帝侯領であったため、他の領邦の発言権は弱く、「選帝侯クライス」と呼ばれるようになりました。

宗教改革の影響を受け、当時ケルン大司教選帝侯であったゲープハルトがプロテスタントに改宗したことから、1583年にケルン司教区戦争が勃発し、ゲープハルトは大司教選帝侯領から追放されました。三十年戦争（1618年～1648年）ではカトリック側で参戦し、フランス王国に領土を侵略されました。三十年戦争後、北ドイツの諸侯たちがプロテスタントに改宗していき、大司教選帝侯としての影響力は徐々に薄れていきました。

18世紀初頭には度々フランス王国の侵略や占領に遭い、1583年〜1761年まではバイエルン系ヴィッテルスバッハ家が大司教位及び選帝侯位を独占しました。フランス革命とそれに続くナポレオン戦争では、幾度となく領土を占領され、1801年のリュネヴィルの和約により、大司教選帝侯領は選帝権を失い、単なる大司教領へと降格しました。

1803年2月25日の帝国代表者会議主要決議により、ケルン大司教領は世俗化され、領土はプロイセン王国、ヘッセン＝ダルムシュタット、ナッサウ公国などに分割され消滅しました。帝国自由都市ケルンと首都ボンはプロイセン王国に併合されました。

ケルン大司教選帝侯領の首都は、953年から1457年まではケルン市でしたが、ケルン市が帝国自由都市となった1475年にボンへと移されました。

もう一度検索