マーティン・ディーゴ

マルティン・ディーゴ：球史に名を刻むオールラウンド・プレイヤー

マルティン・マグダレノ・ディーゴ・リアノス（Martín Magdaleno Dihigo Llanos）は、1905年5月25日にキューバのマタンサス州シドラで生まれ、1971年5月20日に65歳でこの世を去りました。彼は"El Maestro"（エル・マエストロ）の愛称で知られ、その名の通り、野球界における卓越した才能を発揮した伝説的なプロ野球選手です。投手、内野手、外野手として、右投げ右打ちで活躍しました。

多彩なキャリア

1922-1923シーズン、16歳という若さでキューバ国内リーグのレオネス・デル・ハバナに入団し、プロとしてのキャリアをスタートさせました。1923年からは、アメリカのニグロリーグに舞台を移し、キューバ人選抜チームであるキューバン・スターズ (イースト)に所属。当初は主に一塁手として出場しました。

ニグロリーグでは、1926年にイースタン・カラードリーグの本塁打王に輝き、1935年にはニグロ・ナショナルリーグのニューヨーク・キューバンズで2度目の本塁打王を獲得するなど、打撃面でも目覚ましい活躍を見せました。1936年を最後にニグロリーグを離れています。

キューバリーグでは、1927-1928シーズン、1935-1936シーズン、1936-1937シーズン、1941-1942シーズンと、計4度のMVPに輝きました。

メキシカンリーグでは、1938年に打者として打率.387、投手としては18勝2敗・防御率0.90という驚異的な成績を残しました。また、メキシカンリーグ史上初のノーヒットノーランを達成したとも言われています（1937年9月16日）。同年には、当時の大投手サチェル・ペイジとの対決が実現。ディーゴは、この試合でペイジと互角の投手戦を演じた後、9回に自ら決勝本塁打を放ち、チームを勝利に導きました。

1945年には、ニグロリーグのニューヨーク・キューバンズで選手兼任監督として1年間プレーし、イーストウェスト・オールスターゲーム（ニグロリーグのオールスターゲーム）にも10年ぶりに選出されました。

1947年にキューバリーグでのキャリアを終え、その後はメキシカンリーグで選手兼任監督として活躍しました。1950年には、キューバリーグで1試合だけ現役復帰し、2回を投げています。彼の通算107勝76敗は、革命前のキューバリーグにおける最多勝利数であり、通算121完投もリーグ最多記録です。

キューバ革命とその後

ディーゴは、早くからフィデル・カストロを支持し、キューバ革命の成功後はスポーツ省の大臣を務めました。

1951年にはキューバ野球殿堂入りを果たし、1977年にはニグロリーグ特別委員会による選考でアメリカ野球殿堂入りも果たしました。さらに、メキシコ、ベネズエラ、ドミニカ共和国の野球殿堂にも名を連ねています。

プレースタイルと評価

ディーゴは、捕手以外の全ての守備位置を経験したという、驚くべきユーティリティ性を持つ選手でした。アメリカ野球殿堂入りの名一塁手、ジョニー・マイズは、1943年にドミニカ共和国のウィンターリーグでディーゴと共にプレーした際、「すべての守備位置をこなすし、走塁も良く、監督もし、左右どちらでも打つことができた」と語っています。元ニグロリーガーのテッド・ページは、「外野からの送球はロベルト・クレメンテよりも優れていた」と評しました。

アメリカ野球殿堂入りの元ニグロリーガー、バック・レナードや、ロサンゼルス・ドジャースのアル・キャンパニスゼネラルマネージャーも、ディーゴを「今までの人生で見た最高のプレイヤー」と高く評価しました。ユーモアがあり、気立ての良い人柄で知られ、キューバの国民的英雄として愛されました。

マルティン・ディーゴは、その卓越した才能と人間性で、野球史に燦然と輝く存在です。

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