マーティン・バルサム

マーティン・バルサム：ハリウッドとイタリア映画界を繋いだ名優

マーティン・バルサム (1919年11月4日 - 1996年2月13日) は、アメリカ合衆国出身の著名な俳優です。169cmの長身と確かな演技力で、ハリウッド黄金期を代表する名脇役として知られています。ニューヨークのブロンクス区にユダヤ系の両親のもとに生まれ、ザ・ニュー・スクールで演技を学んだ後、第二次世界大戦に従軍。戦後、エリア・カザンやリー・ストラスバーグといった巨匠に見出され、アクターズ・スタジオで研鑽を積みました。

1947年よりテレビや映画に出演し始め、1965年には『裏街・太陽の天使』でアカデミー助演男優賞を受賞。さらに1967年には舞台作品『You Know I Can't Hear You When the Water's Running』でトニー賞も受賞するなど、確固たる演技力を認められました。

バルサムのキャリアは、1950年代から1970年代にかけてハリウッド・メジャー作品への出演が中心でした。『十二人の怒れる男』(1957年)、『ティファニーで朝食を』(1962年)、『オリエント急行殺人事件』(1974年)、『大統領の陰謀』(1976年)など、現在も名作として語り継がれる数々の映画で重要な脇役を演じ、作品に深みとリアリティを与えました。中でも『トラ・トラ・トラ！』(1970年)では、キンメル将軍役として実質的な主役を演じるなど、その存在感は圧倒的でした。

しかし、バルサムの活躍はハリウッドに留まりませんでした。1960年代頃から、スティーブ・マックイーンやクリント・イーストウッドに続くように多くのハリウッド俳優がイタリア映画界に進出する流れがありました。バルサムも例外ではなく、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『紳士泥棒/大ゴールデン作戦』(1965年)を皮切りに、イタリア映画界にも積極的に参加しました。

イタリア映画での活動は、社会派作品から喜劇、マカロニ・ウエスタンまで多岐に渡り、『警視の告白』(1971年)、『オニオン流れ者』(1976年)、『ユル・ブリンナーの殺人ライセンス』(1976年)、『ガーデニア』(1979年)など、様々なジャンルの作品に出演。ジュリアーノ・ジェンマやフランコ・ネロといったイタリア映画スターとの共演も多く、国際的な俳優としての地位を確立しました。

1980年代後半になると、出演作は『地獄のミッション』(1987年)、『怒りのタッチダウン/人質奪回作戦』(1990年)、『帰って来たE.T.』(1988年)といったB級作品が増え、ハリウッドでの活動も『デルタ・フォース』(1985年)、『スーパー・マグナム』(1985年)といったB級アクションにシフトしていきました。しかし、晩年まで精力的に活動を続け、その豊かなキャリアは多くの映画ファンに記憶されています。

バルサムは、1996年2月13日、ローマのホテルで亡くなりました。彼の残した作品は、今もなお世界中の映画ファンを魅了し続けています。また、女優である娘のタリア・バルサムも、彼の血を受け継ぎ、女優として活躍しています。マーティン・バルサムの功績は、ハリウッドのみならず、イタリア映画界にも大きな影響を与え、彼の名は、映画史に永遠に刻まれることでしょう。

もう一度検索