マーティン・ファクラー
マーティン・ファクラーは、1966年11月16日生まれのアメリカ人ジャーナリスト、ライターです。彼は、AP通信の上海支局長、ウォール・ストリート・ジャーナルの東京特派員、ニューヨーク・タイムズの東京支局長といった主要なメディアで要職を歴任しました。また、東京大学大学院情報学環で非常勤講師、ジャパンタイムズのメディア顧問委員会の委員も務めました。
2015年8月からは、独立系シンクタンクである日本再建イニシアティブの主任研究員兼ジャーナリストとして活動しています。
ファクラーは、アメリカ合衆国アイオワ州で生まれ、ジョージア州で育ちました。ダートマス大学在学中に、中国語と漢文を学ぶため台湾の東海大学に留学したことが、東アジアとの関わりの始まりでした。その後、慶應義塾大学で日本語を習得する機会を得て来日。1993年には東京大学で経済学修士号を取得しました。さらに、1994年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でジャーナリズム修士号を取得した後、1996年にカリフォルニア大学バークレー校で東洋史研究の博士課程に入りました。
ジャーナリストとしてのキャリアは、1996年にブルームバーグの東京駐在員としてスタートし、その後AP通信に移籍。東京、ニューヨーク、北京、上海で活動しました。2003年からはウォール・ストリート・ジャーナルの東京駐在員として、金融、財政、貿易、外交などの分野で取材・報道を行いました。
2004年には、インド洋津波の取材で、アジア出版協会から国際取材賞を受賞しています。2005年からはニューヨーク・タイムズ東京駐在員となり、2009年2月には東南アジア支局長に転出したノリミツ・オオニシの後任として、東京支局長に就任しました。
また、ニューヨーク・タイムズでは、田淵広子とともに日本トピックキュレーターも務めました。2015年8月1日からは、日本再建イニシアティブの主任研究員兼ジャーナリスト・イン・レジデンスとして活動しています。
ファクラーは、そのジャーナリスト活動の中で、数々の重要な記事を執筆しています。
2000年には、AP通信北京特派員時代に、日中関係に関する記事で、中国が過去の歴史問題を繰り返し取り上げるのは、中国共産党の統治の正当性を主張するためだと指摘し、日本でも注目を集めました。
2004年には、ウォール・ストリート・ジャーナル東京特派員として、スマトラ島沖地震の直後にインドネシアへ赴き、インド洋津波の被害を現地取材。国連などによる災害救援の問題点を指摘する記事を調査報道チームの一員として執筆し、アジア出版協会から新聞部門で優秀賞を受賞しました。
2009年から2010年にかけては、西松建設事件を巡る問題を報道。小沢一郎に対する検察捜査のあり方や、当局発表を無批判に報道する記者クラブのあり方を批判し、日本のメディアから多くの取材を受けました。
2010年1月には、中曽根康弘元首相との単独インタビューを行い、鳩山由紀夫政権に対し、日米同盟の信頼回復に尽力するよう促しました。
2012年8月には、「強い円は日本の世代を分断する」という記事で、円高によるデフレーションが金融資産を持つ高齢者に有利に働き、若い世代との格差が拡大している状況を報道しました。この報道に対しては、藤崎一郎駐米大使が不快感を表明しましたが、公務員の影響が抜け落ちているという批判も上がりました。
2012年9月には、尖閣諸島周辺海域で中国公船による領海侵入が活発化する中、石垣島で漁船をチャーターして尖閣諸島からの現地ルポを行い、海外メディアでは珍しい試みとして注目されました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、翌日から被災地に入り、茨城県、宮城県、岩手県など東北各地で被害状況を伝えました。
宮城県南三陸町では、九死に一生を得た町長の声を、孤立した集落の住民が自立して生活を組織する様子を、岩手県大槌町では家族を失った悲しみや被災した学校の状況を、宮古市では津波石に関する歴史的な話を報道しました。また、原発事故直後の南相馬市からは、取り残される不安を抱える桜井勝延市長の訴えを伝え、後に市長はTIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれました。
ファクラーは、原発事故に関連して、原発を巡る政官財の利権構造、地方の原発依存、SPEEDIによる放射線測定結果の政府発表遅延、情報開示に関する政府と米政府間の軋轢、東電の政治への影響、電力供給の発送電分離などの改革への抵抗といった問題を調査報道しました。さらに、福島第一原子力発電所内部からのレポートも行いました。
これらの報道をまとめた著書『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』（双葉社、2012年）では、日本の新聞が抱える問題点や記者クラブ制度の問題点を指摘しました。
2011年11月には、外国人記者として初めて福島第一原子力発電所での現地取材を行いました。
東日本大震災に関する一連の報道は、2012年にピューリッツァー賞のファイナリストにノミネートされたほか、米国海外報道クラブのハル・ボイル賞の次点、アジア出版協会からの調査報道優秀賞を受賞するなど、国内外で高く評価されました。
ファクラーは、日本のメディアの問題点についても積極的に発言しています。2014年から2015年にかけては、ニューヨーク・タイムズ紙で日本のメディアが安倍晋三政権下で政治的圧力に屈していると批判しました。
著書『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』では、記者クラブ制度が権力者への過剰な依存を生み、「受身的なジャーナリズム」を生み出していると指摘しました。2015年には、ISILによる日本人拘束事件に対する日本のマスコミの対応を強く批判しました。
2016年には、コロンビア・ジャーナリズム・レビューで、朝日新聞の調査報道チームが吉田調書報道を契機に事実上解体された経緯を紹介し、クーリエ・ジャポンにも翻訳されました。
2021年には、毎日新聞のインタビューで、日本の大手メディアが権力者の「ウォッチドッグ（番犬）」になっていないと指摘しました。
ファクラーは、多数の著書を発表しており、その内容は日本のメディア問題、政治、社会、震災、原発など多岐にわたります。代表的な著書として、以下のものが挙げられます。
『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉社, 2012年)
『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』(双葉社, 2016年)
『世界が認めた「普通でない国」日本』(祥伝社, 2016年)
『権力者とメディアが対立する新時代』(詩想社, 2018年)
『米国人ジャーナリストだから見抜けた日本の国難』(SB新書, 2019年)
『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(光文社、2020年)
『吠えない犬 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール』(双葉社, 2020年)
『日本人の愛国』(KADOKAWA, 2021年)
また、複数の共著や、海外の書籍の一章も執筆しています。
ファクラーは、映画「新聞記者」に特別出演したほか、映画「妖怪の孫」にも出演しています。
ファクラーと関連する人物として、ジャーナリストの望月衣塑子、前川喜平、政治家の小沢一郎、福島第一原子力発電所所長の吉田昌郎、ジャーナリストのノリミツ・オオニシ、ニコラス・クリストフなどが挙げられます。
ファクラーは、自身のウェブサイトやTwitterで情報を発信しています。
公式ウェブサイト: martinfackler.com
Twitter: @martfack
ファクラーは、その長年のジャーナリスト経験と、日本に対する深い理解に基づいて、多岐にわたるテーマで執筆、講演活動を行っています。彼の批判的な視点は、国内外から大きな注目を集めています。
2015年8月からは、独立系シンクタンクである日本再建イニシアティブの主任研究員兼ジャーナリストとして活動しています。
経歴
ファクラーは、アメリカ合衆国アイオワ州で生まれ、ジョージア州で育ちました。ダートマス大学在学中に、中国語と漢文を学ぶため台湾の東海大学に留学したことが、東アジアとの関わりの始まりでした。その後、慶應義塾大学で日本語を習得する機会を得て来日。1993年には東京大学で経済学修士号を取得しました。さらに、1994年にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でジャーナリズム修士号を取得した後、1996年にカリフォルニア大学バークレー校で東洋史研究の博士課程に入りました。
ジャーナリストとしてのキャリアは、1996年にブルームバーグの東京駐在員としてスタートし、その後AP通信に移籍。東京、ニューヨーク、北京、上海で活動しました。2003年からはウォール・ストリート・ジャーナルの東京駐在員として、金融、財政、貿易、外交などの分野で取材・報道を行いました。
2004年には、インド洋津波の取材で、アジア出版協会から国際取材賞を受賞しています。2005年からはニューヨーク・タイムズ東京駐在員となり、2009年2月には東南アジア支局長に転出したノリミツ・オオニシの後任として、東京支局長に就任しました。
また、ニューヨーク・タイムズでは、田淵広子とともに日本トピックキュレーターも務めました。2015年8月1日からは、日本再建イニシアティブの主任研究員兼ジャーナリスト・イン・レジデンスとして活動しています。
著名な記事
ファクラーは、そのジャーナリスト活動の中で、数々の重要な記事を執筆しています。
2000年には、AP通信北京特派員時代に、日中関係に関する記事で、中国が過去の歴史問題を繰り返し取り上げるのは、中国共産党の統治の正当性を主張するためだと指摘し、日本でも注目を集めました。
2004年には、ウォール・ストリート・ジャーナル東京特派員として、スマトラ島沖地震の直後にインドネシアへ赴き、インド洋津波の被害を現地取材。国連などによる災害救援の問題点を指摘する記事を調査報道チームの一員として執筆し、アジア出版協会から新聞部門で優秀賞を受賞しました。
2009年から2010年にかけては、西松建設事件を巡る問題を報道。小沢一郎に対する検察捜査のあり方や、当局発表を無批判に報道する記者クラブのあり方を批判し、日本のメディアから多くの取材を受けました。
2010年1月には、中曽根康弘元首相との単独インタビューを行い、鳩山由紀夫政権に対し、日米同盟の信頼回復に尽力するよう促しました。
2012年8月には、「強い円は日本の世代を分断する」という記事で、円高によるデフレーションが金融資産を持つ高齢者に有利に働き、若い世代との格差が拡大している状況を報道しました。この報道に対しては、藤崎一郎駐米大使が不快感を表明しましたが、公務員の影響が抜け落ちているという批判も上がりました。
2012年9月には、尖閣諸島周辺海域で中国公船による領海侵入が活発化する中、石垣島で漁船をチャーターして尖閣諸島からの現地ルポを行い、海外メディアでは珍しい試みとして注目されました。
東日本大震災
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、翌日から被災地に入り、茨城県、宮城県、岩手県など東北各地で被害状況を伝えました。
宮城県南三陸町では、九死に一生を得た町長の声を、孤立した集落の住民が自立して生活を組織する様子を、岩手県大槌町では家族を失った悲しみや被災した学校の状況を、宮古市では津波石に関する歴史的な話を報道しました。また、原発事故直後の南相馬市からは、取り残される不安を抱える桜井勝延市長の訴えを伝え、後に市長はTIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれました。
ファクラーは、原発事故に関連して、原発を巡る政官財の利権構造、地方の原発依存、SPEEDIによる放射線測定結果の政府発表遅延、情報開示に関する政府と米政府間の軋轢、東電の政治への影響、電力供給の発送電分離などの改革への抵抗といった問題を調査報道しました。さらに、福島第一原子力発電所内部からのレポートも行いました。
これらの報道をまとめた著書『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』（双葉社、2012年）では、日本の新聞が抱える問題点や記者クラブ制度の問題点を指摘しました。
2011年11月には、外国人記者として初めて福島第一原子力発電所での現地取材を行いました。
東日本大震災に関する一連の報道は、2012年にピューリッツァー賞のファイナリストにノミネートされたほか、米国海外報道クラブのハル・ボイル賞の次点、アジア出版協会からの調査報道優秀賞を受賞するなど、国内外で高く評価されました。
メディア批評
ファクラーは、日本のメディアの問題点についても積極的に発言しています。2014年から2015年にかけては、ニューヨーク・タイムズ紙で日本のメディアが安倍晋三政権下で政治的圧力に屈していると批判しました。
著書『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』では、記者クラブ制度が権力者への過剰な依存を生み、「受身的なジャーナリズム」を生み出していると指摘しました。2015年には、ISILによる日本人拘束事件に対する日本のマスコミの対応を強く批判しました。
2016年には、コロンビア・ジャーナリズム・レビューで、朝日新聞の調査報道チームが吉田調書報道を契機に事実上解体された経緯を紹介し、クーリエ・ジャポンにも翻訳されました。
2021年には、毎日新聞のインタビューで、日本の大手メディアが権力者の「ウォッチドッグ（番犬）」になっていないと指摘しました。
主な著作
ファクラーは、多数の著書を発表しており、その内容は日本のメディア問題、政治、社会、震災、原発など多岐にわたります。代表的な著書として、以下のものが挙げられます。
『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉社, 2012年)
『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』(双葉社, 2016年)
『世界が認めた「普通でない国」日本』(祥伝社, 2016年)
『権力者とメディアが対立する新時代』(詩想社, 2018年)
『米国人ジャーナリストだから見抜けた日本の国難』(SB新書, 2019年)
『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(光文社、2020年)
『吠えない犬 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール』(双葉社, 2020年)
『日本人の愛国』(KADOKAWA, 2021年)
また、複数の共著や、海外の書籍の一章も執筆しています。
メディア出演
ファクラーは、映画「新聞記者」に特別出演したほか、映画「妖怪の孫」にも出演しています。
関連人物
ファクラーと関連する人物として、ジャーナリストの望月衣塑子、前川喜平、政治家の小沢一郎、福島第一原子力発電所所長の吉田昌郎、ジャーナリストのノリミツ・オオニシ、ニコラス・クリストフなどが挙げられます。
その他
ファクラーは、自身のウェブサイトやTwitterで情報を発信しています。
公式ウェブサイト: martinfackler.com
Twitter: @martfack
ファクラーは、その長年のジャーナリスト経験と、日本に対する深い理解に基づいて、多岐にわたるテーマで執筆、講演活動を行っています。彼の批判的な視点は、国内外から大きな注目を集めています。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。