マーテン・シュミット

マーテン・シュミット（Maarten Schmidt、1929年12月28日 - 2022年9月17日）は、オランダを代表する天文学者であり、特にクエーサーのスペクトルにおける大きな赤方偏移の発見で世界的にその名を知られています。彼の業績は、宇宙論における重要な転換点となり、宇宙の膨張と進化に関する我々の理解を深める上で不可欠なものでした。

生涯

フローニンゲンで生を受けたシュミットは、ライデン大学で著名な天文学者ヤン・オールトの指導の下で研究を行い、1956年に博士号を取得しました。その後、1959年にアメリカ合衆国へと渡り、カリフォルニア工科大学で研究を始めました。当初は銀河の質量分布と運動力学に焦点を当てていましたが、後に電波源の光スペクトル研究へとその関心を移しました。

1963年、シュミットはクエーサー3C 273のスペクトルを詳細に分析し、水素のスペクトル線が顕著な赤方偏移を示すことを発見しました。この赤方偏移は、3C 273が太陽系から時速約44,000km（光速の約16%）という驚異的な速度で遠ざかっていることを示しており、当時の定常宇宙論を提唱していたフレッド・ホイルの理論を否定する強力な証拠となりました。さらに、1991年にはドナルド・シュナイダー、ジェームズ・E・ガンらとの共同研究で、光速の94.5%で遠ざかるクエーサーを発見し、宇宙の膨張速度の限界に迫りました。

研究の意義

シュミットのクエーサー研究は、宇宙論に革命をもたらしました。クエーサーが持つ大きな赤方偏移は、それらが非常に遠方にある天体であることを示唆し、宇宙が膨張しているというビッグバン理論を支持する重要な証拠となりました。また、これらの発見は、活動銀河核（AGN）と呼ばれる、銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールの存在を間接的に示唆し、天文学における新たな研究分野を切り開きました。彼の研究は、宇宙の構造と進化を理解するための基礎となり、その後の天文学研究に大きな影響を与え続けています。

受賞歴

シュミットは、その卓越した業績により数多くの賞を受賞しています。主なものとして、1964年のヘレン・B・ワーナー賞、1968年のカール・シュヴァルツシルト・メダル、1978年の米国天文学会ヘンリー・ノリス・ラッセル講師職、1980年のイギリス王立天文学会ゴールドメダル、1991年のジェームズ・クレイグ・ワトソン・メダル、1992年のブルース・メダル、そして2008年のカヴリ賞が挙げられます。これらの受賞は、彼の天文学への貢献が国際的に高く評価されていることを証明しています。

エポニム

シュミットの業績を讃え、[小惑星]には彼の名が冠され、(10430) Martschmidt と命名されています。彼の名前は、天文学の世界で永遠に記憶されることでしょう。

外部リンク

• - Maarten Schmidt | Department of Physics & Astronomy at Sonoma State University

もう一度検索