マーブルキャット

マーブルキャット（Pardofelis marmorata）

マーブルキャットは、ネコ科の動物で、食肉目ネコ科Pardofelis属に分類されています。本種のみでPardofelis属を構成するという説もあります。別名として、マーブルドキャットやマーブルネコとも呼ばれています。

分布

マーブルキャットは、インド北東部から東南アジアにかけて広く分布しています。具体的には、インドネシア（スマトラ島、ボルネオ島）、カンボジア、タイ王国、中華人民共和国南西部、ネパール、ブータン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスなどが挙げられます。模式産地はスマトラ島と考えられています。

形態

マーブルキャットは、体長が45～62cm、尾長が36～55cm、体重が2～5kgと、比較的小型のネコ科動物です。全身は柔らかく密な体毛で覆われており、背面は黒みがかった黄褐色、腹面は淡黄色をしています。顔や頸部、背には黒い縞模様が入り、体側面には黒く縁取られた斑紋があります。尾には黒い横縞と斑点が見られます。斑紋は個体によって変異が大きいのが特徴です。

耳は丸みを帯び、耳の後ろ側は黒い体毛で覆われ、白い斑点（虎耳状斑）が入っています。虹彩は淡褐色で、瞳孔は縦長の楕円形をしています。四肢はやや短く、爪は完全に鞘に引っ込めることができません。

分類

マーブルキャットは、斑紋や細長い犬歯がウンピョウに似ていますが、体重がウンピョウの約3分の1と非常に小型であること、核型がヒョウ属やオオヤマネコ属と共通することなどから、分類が混乱していました。かつてはヒョウ亜科に含められたり、特にウンピョウと近縁とする説もありました。

2006年の分子系統解析では、ネコ亜科内で初期に分岐した系統に含まれるという結果が得られました。この結果から、Pardofelis属にアジアゴールデンキャットやボルネオヤマネコを含める説も提唱されています。

毛色による亜種分割が行われていましたが、現在は以下の2亜種に分類されています。

Pardofelis marmorata marmorata (Martin, 1837)
分布：クラ地峡以南のタイ南部、マレーシア、インドネシア（スマトラ島、ボルネオ島）
特徴：毛色は灰色で、斑紋が明瞭
Pardofelis marmorata longicaudata (Blainville, 1843)
分布：インドからミャンマー北部、クラ地峡以北の東南アジア
特徴：毛色が褐色

以前は毛色の二型境界をクラ地峡としていましたが、遺伝子解析の結果、インドシナ半島個体群とマレー半島（スンダ）個体群は約200万年前に分岐したと判明しました。このことから、クラ地峡以北の個体群が将来的に別種として分割される可能性や、ボルネオ島の褐色個体群が別亜種になる可能性も指摘されています。

生態

マーブルキャットは森林に生息し、熱帯の多湿な落葉広葉樹と常緑広葉樹が混じった混交林を好むと考えられています。夜行性で、単独で行動することが多いとされています。

主に鳥類やリスなどの齧歯類を捕食し、その他にもトカゲやカエルなども食べると考えられています。飼育下では、リスや鳥、カエルを食べる例が報告されています。狩りは川沿いの土手や、開けた見通しの良い場所で行うという説もありますが、マーブルキャットの生息地は樹木が密集しているため、その生態はほとんど解明されていません。

人間との関係

マーブルキャットは、家禽を捕食することがあるため、害獣とみなされることもあります。しかし、森林伐採や農地開発による生息地の破壊、皮革用や食用、骨目的の狩猟などにより、個体数が減少していると考えられています。1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書Iに掲載されており、保護対象となっています。

マーブルキャットは、その生態が謎に包まれた希少な動物です。今後の研究で、その生態がより明らかになることが期待されます。

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