マールテン・トロンプ

マールテン・ハルペルツーン・トロンプ：オランダ海軍の英雄

マールテン・ハルペルツーン・トロンプ（Maarten Harpertszoon Tromp, 1597年4月23日 - 1653年8月10日）は、17世紀のオランダを代表する軍人であり、卓越した海軍提督として知られています。彼の息子であるコルネリス・トロンプもまた、提督として名を残しています。

生涯

トロンプは、1597年にブリエルで生まれました。彼の父、ハルベルト・トロンプはオランダ海軍の艦長であり、幼い頃から父と共に船に乗り、海軍の道を歩み始めました。しかし、悲劇が彼を襲います。イギリス人海賊によって父が殺害され、自身も2年間捕虜として過ごすという辛い経験をしました。解放後、トロンプはオランダ海軍に入隊し、その才能を開花させていきます。

海軍では、温厚で実直な人柄と、卓越した操船技術（シーマンシップ）によって、急速に昇進を重ねました。オランダ本国艦隊の旗艦艦長を経て、最終的にはオランダ本国艦隊の最高司令官という要職に就任しました。

八十年戦争での活躍

トロンプは、八十年戦争（1568年 - 1648年）において、その軍事的な才能を遺憾なく発揮しました。1639年には、ダンケルクの海戦（Action of 18 February 1639）でスペイン艦隊を打ち破るという大きな戦果を挙げました。同年、ダウンズの海戦では、上陸部隊を乗せたスペイン・ポルトガルの大艦隊を撃破し、オランダの独立に大きく貢献しました。

英蘭戦争

第一次英蘭戦争

1652年、第一次英蘭戦争が勃発します。その口火を切ったのは、同年5月29日にドーバー沖で発生した、トロンプ提督率いるオランダ艦隊と、ロバート・ブレイク提督率いるイングランド艦隊との衝突（ドーバーの海戦）でした。この海戦は引き分けに終わり、トロンプは一時的に司令官職を解任されます。後任にはウィット提督が任命されましたが、ケンティッシュ・ノックの海戦でブレイクに敗北を喫してしまいます。これにより、トロンプは再び司令官に復職することとなりました。

同年12月、ダンジュネスの海戦でトロンプはブレイク艦隊と再戦し、見事勝利を収め、オランダは制海権を一時的に取り戻しました。

しかし、1653年2月から3月にかけてのポートランド沖海戦で、ジョージ・マンク提督率いるイギリス艦隊に大敗を喫し、オランダは再び制海権を失いました。同年6月のガッバードの海戦（ノースフォアランドの海戦）でも、ブレイクの後任として指揮を執ったマンク艦隊に敗れ、オランダ沿岸は封鎖されるという苦境に立たされました。

同年8月、再建途中のオランダ艦隊がマンク艦隊に発見され、シェヴェニンゲンの海戦（テル・ヘイデの海戦）が勃発しました。激戦の末、オランダ艦隊は大きな損害を出し、トロンプ自身もこの戦いで戦死しました。しかし、イギリス艦隊もまた大きな損害を受けたため、沿岸封鎖を続けることはできなくなりました。

トロンプの死後、1654年にウェストミンスター条約が締結され、第一次英蘭戦争は終結しました。オランダ艦隊は、トロンプの下で戦歴を積んだミヒール・デ・ロイテルが引き継ぎ、次の戦争へと備えることになります。

マールテン・ハルペルツーン・トロンプは、その勇敢さと卓越した指揮能力によって、オランダ海軍の黄金時代を築き上げた英雄として、今もなお語り継がれています。

関連項目

マールテン・ハーペルソン・トロンプ (海防戦艦)
トロンプ級軽巡洋艦
トロンプ (軽巡洋艦)

外部リンク

ローカル英雄伝　マールテン・トロンプ

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