ミカエル7世ドゥーカス

ミカエル7世ドゥーカス：動乱の時代の皇帝

ミカエル7世ドゥーカス・パラピナケス（1050年 - 1090年頃）は、東ローマ帝国ドゥーカス王朝の皇帝として1071年から1078年まで君臨しました。彼の治世は、帝国の衰退へと繋がる数々の危機に満ちた時代でした。

幼少期と帝位継承

コンスタンティノス10世ドゥーカスとエウドキア・マクレンボリティサの子として生まれたミカエルは、1065年にグルジア王女マリアと結婚し、長男コンスタンティノスをもうけました。しかし、1067年に父帝が崩御すると、幼少であったため、母エウドキアが女帝として摂政を務めました。翌年、エウドキアは民衆と貴族の圧力によって退位し、ロマノス4世ディオゲネスが皇帝となりました。

マンズィケルトの敗北と帝位奪取

1071年、ロマノス4世はマンズィケルトの戦いでセルジューク朝に決定的な敗北を喫し、捕虜となりました。この大敗を機に、エウドキアは夫を廃し、息子であるミカエルを皇帝として即位させました。釈放されたロマノス4世はミカエル7世の即位を認めず抵抗を試みましたが、捕らえられ、失明させられた後に追放され、翌年亡くなりました。ロマノス4世とセルジューク朝の間で結ばれた休戦協定は破棄され、セルジューク朝は帝国への大規模な侵攻を開始、小アジアの大半がセルジューク朝の手に落ちることとなりました。

帝国の危機：内紛と外敵

ロマノス4世の敗北と帝位争いは、帝国の西方にも影響を及ぼしました。1071年、ノルマン人がイタリア南部（マグナ・グラエキア）に侵攻し、バーリを陥落させ、東ローマ帝国の南イタリア支配は終焉を迎えました。

国内では、経済の混乱が深刻化しました。ミカエル7世は宦官ニケフォリツィスを重用し、穀物貿易の専売制を導入して価格統制を試みましたが、かえって物価上昇を招き、民衆の暴動を引き起こしました。さらに、ノルマン人傭兵隊長ルセール・ド＝バイユールやニケフォロス・ブリュエンニオス、ニケオフォロス・ボタネイアテスなど、有力な軍事貴族による反乱が頻発しました。

退位とその後

1078年1月7日、首都コンスタンティノポリスの民衆は、小アジアにいたニケフォロス・ボタネイアテスを新しい皇帝として擁立しました。ボタネイアテスは首都に向けて進軍し、首都では反乱が勃発。ミカエル7世は退位し、修道院へ入りました。彼の治世は、わずか7年間でしたが、帝国の衰退を加速させる重要な転換期となりました。「パラピナケス」というあだ名からも分かるように、彼の治世下ではインフレが深刻化し、国民生活は大きな打撃を受けました。彼の治世は、東ローマ帝国が直面した様々な問題を象徴するものでした。 ミカエル7世の時代は、帝国の軍事力と経済力の衰退、そして内紛の激化という、後のビザンツ帝国の衰亡へとつながる重要な時代であったと言えます。

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