ミゲル・イディゴラス・フエンテス

ミゲル・イディゴラス・フエンテス：グアテマラ激動の時代を生きた大統領

ミゲル・イディゴラス・フエンテス（1895年10月17日 - 1982年10月27日）は、グアテマラの軍人であり、後に政治家として、1958年から1963年までグアテマラの大統領を務めました。しかし、クーデターによってその座を追われることとなりました。彼の政権下で1960年に始まったグアテマラ内戦は、1996年まで続く長い戦いとなりました。

生涯

イディゴラスは、レタルレウ県の県都レタルレウで生まれました。グアテマラシティの軍学校で学んだ後、1915年に歩兵隊に入隊。その後、ワシントンDCとパリのグアテマラ大使館で武官を務めました。

1922年から1939年までサン・マルコス県知事を務め、ホルヘ・ウビコ政権下の1937年には将軍に昇進しました。1939年からは道路局長として公共事業に携わりました。

1944年6月、ホルヘ・ウビコ大統領が反政府運動によって辞職。後任としてフアン・フェデリコ・ポンセ・バイデス将軍が臨時大統領に就任しますが、同年10月、フランシスコ・ハビエル・アラナとハコボ・アルベンスに率いられた将校によるクーデターが発生し、ポンセ・バイデス政権は倒されました。これがグアテマラ革命の始まりです。革命後、イディゴラスは軍人としての権力を失いますが、新政府によってイギリス大使に任命されました。

1950年大統領選挙と亡命

1949年にアルベンスの指示によってアラナが暗殺された後、1950年、イディゴラスは国民民主和解党(PRDN)を組織し、大統領選挙に出馬。アルベンスと争いましたが、国民的人気の高いアルベンスが25万票を獲得して当選。イディゴラスは7万2000票にとどまりました。選挙の1週間前、イディゴラスは亡命。本人の主張では、アルベンスが彼を暗殺しようとしたためとされていますが、信憑性は低いとされています。

イディゴラスは、革命政府のアレバロ大統領やアルベンス大統領を批判しましたが、その影響力は保守派や上流階級に限られていました。アメリカ合衆国のCIAは、アルベンス政権の打倒を計画していましたが、その候補としてカスティージョ・アルマスを最優先とし、イディゴラスについては支持基盤の弱さや、ウビコ政権下での活動歴を問題視していました。しかし、CIAの支援を受けた1954年のクーデターによってアレバロ政権が倒され、カスティージョ・アルマスが臨時大統領に就任し、グアテマラ革命中の改革は覆されました。アルマス政権下で、イディゴラスはコロンビア大使を務めました。

大統領として

1957年にカスティージョ・アルマス臨時大統領が暗殺されたことで、グアテマラの政治情勢は再び不安定化します。1958年1月、イディゴラスは選挙でホセ・ルイス・クルス・サラサルを破り大統領に就任しました。しかし、過半数を獲得できず、議会内でも少数派にとどまりました。

イディゴラスは大統領就任当初、和解を唱え、多くの国外亡命者の帰国を許可しました。また、前政権で禁止されていた労働組合も容認しましたが、政権が不安定化し、反政府運動が活発になると、その開放性は失われました。

外交面では、イギリスに対してイギリス領ホンジュラス（現在のベリーズ）の返還を要求し、対立を深めました。また、メキシコとも領土問題を抱えていました。彼はキューバのフィデル・カストロ政権と国交を断絶し、カストロ政権を打倒するためのピッグス湾事件に関与。グアテマラ国内でゲリラの訓練を行うことを許可しました。

グアテマラ内戦の勃発と失脚

1960年11月13日、ヨン・ソサとトゥルシオス・リマに率いられた軍の若手将校によるクーデターが発生しましたが、失敗に終わりました。しかし、彼らはゲリラ組織MR-13を結成し、以後1996年まで続くグアテマラ内戦が始まりました。1962年12月（公式には1963年2月）には、MR-13や非合法のグアテマラ労働党(PGT)などによって武装反乱軍(FAR)が結成されました。

左翼勢力は、グアテマラ革命時の大統領フアン・ホセ・アレバロを亡命先から呼び戻し、1963年の大統領選挙に擁立しようとしました。1963年3月29日、グアテマラの新聞はアレバロの帰国を報道。これに対し、エンリケ・ペラルタ・アスルディア国防相は、アレバロが大統領に再選されることを恐れ、翌3月30日にクーデターを起こし、イディゴラス政権は倒されました。ペラルタは選挙を中止し、イディゴラスはパナマへ亡命しました。

1982年、イディゴラスはグアテマラシティで脳内出血により死去。86歳でした。

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