ミサ曲第3番 (シューベルト)

ミサ曲第3番 変ロ長調 D324

フランツ・シューベルトによって1815年に書かれたこのミサ曲は、変ロ長調、作品番号D324として知られています。作曲は同年11月11日に開始されました。演奏時間はおよそ30分と比較的短いながらも、トランペット、ティンパニ、木管楽器を含む充実した管弦楽編成が用いられている点が特徴です。そのため、規模の点では「ミサ・ブレヴィス」（短いミサ）に分類され得る一方、その豊かな響きと表現力においては「ミサ・ソレムニス」（荘厳ミサ）の要素も兼ね備えていると言えます。

作曲の具体的な契機は明らかではありませんが、このミサ曲がリヒテンタール教区教会での演奏を意図して書かれた可能性が指摘されています。初演におけるソプラノ独唱は、シューベルトが慕っていたテレーゼ・グロープが務めたと考えられており、彼女との時間を求めて作曲されたのではないかという推測も存在します。

楽曲のスタイルは、当時の主要な作曲家たちの影響を反映しています。特にその大きな管弦楽の使い方や、器楽による間奏の拡張といった点は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの作風に類似すると評されることが多く、ハイドンの傑作である「ネルソン・ミサ」との関連性がしばしば指摘されます。また、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトやヨハン・ゼバスティアン・バッハからの示唆も楽曲中に見出せると言われています。

初演に関する詳細な記録は残されていませんが、このミサ曲がウィーンの外部でも演奏され、知られていたことは確認されています。例えば、1824年10月6日付のシューベルトの兄、フェルディナントからの手紙には、彼がハインブルクにおいて、あるミサ曲のオルガン演奏を依頼されたことが記されています。依頼された時点では作曲者の名を知らされていませんでしたが、楽譜を受け取って初めて、それが弟フランツの手による作品であることにフェルディナントは気づいたというエピソードが残されています。

このミサ曲は以下の編成で演奏されます。

独唱: ソプラノ、アルト、テノール、バス
合唱: 混声四部合唱（SATB）
* 管弦楽: トランペット2、ティンパニ、オーボエ2、ファゴット2、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、通奏低音（チェロ、コントラバス、オルガン）

楽曲は伝統的なミサ通常文に沿った以下の全6曲で構成されています。

1. キリエ (Kyrie)
2. グローリア (Gloria)
3. クレド (Credo)
4. サンクトゥス (Sanctus)
5. ベネディクトゥス (Benedictus)
6. アニュス・デイ (Agnus Dei)

これらの要素から、シューベルトの初期のミサ曲作品の中でも、表現力と編成の面で注目すべき一曲と言えます。

もう一度検索