ミシェル・タピエ

ミシェル・タピエ（Michel Tapié de Céleyran, 1909年2月26日 - 1987年7月30日）は、フランス出身の国際的な評論家、キュレーター、そして熱心な美術収集家でした。彼は、抽象表現主義と密接に関連するタシスムの重要な理論家であり、その実践者でもありました。また、フランスの由緒ある貴族の家系に生まれ、画家のトゥールーズ＝ロートレックとは親戚関係にありました（ロートレックの母アデル・タピエはミシェルの大叔母にあたります）。

タピエは1952年に発表した著書『もう1つの芸術』（Un art autre）で、美術界に大きな衝撃を与えました。この著作は英語圏では『Art of Another Kind』としても知られ、抽象表現主義、特にアクション・ペインティングやリリカル・アブストラクションといったアメリカ発の動向をヨーロッパに紹介し、大きな影響を与えました。ハーシェル・B・チップの著作『現代芸術理論 - 芸術家と批評家に対する原本』には、タピエの業績が詳細に紹介されています。

タピエは、1940年代半ばから始まった前衛芸術の発展において、著者、批評家、展覧会オーガナイザー、そして世界中のギャラリーのアドバイザーとして、多岐にわたる役割を果たしました。彼は、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、日本といった地域を横断し、現代美術の普及に尽力しました。

1952年には、パリのポール・ファケッティ・スタジオで開催されたジャクソン・ポロックの最初の個展を支援し、カタログを執筆しました。また、フランスの叙情抽象画家ジョルジュ・マチューを初期から支持したことでも知られています。

1960年、タピエは建築家のルイジ・モレッティとともに、イタリアのトリノに美学研究国際センターを設立しました。このセンターは、芸術の研究と展示だけでなく、批評的、調査的、理論的な芸術に関する業績の出版と普及を目的としていました。タピエの死後、センターは閉鎖されましたが、彼が創設した美術館には、近代美術と現代美術の常設展示が残されています。

タピエは、フルクサス運動に影響を与えた日本の具体美術協会とも深い関わりを持っていました。彼は、パリ、トリノ、ニューヨーク、ローマ、東京、ミュンヘン、マドリード、アムステルダム、ブエノスアイレス、ミラノ、大阪など、世界中の主要都市で数多くの展覧会を企画し、現代美術の国際的な発展に大きく貢献しました。

ミシェル・タピエは、その先見性と情熱によって、20世紀美術史において重要な足跡を残した人物です。

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