ミスター エロチスト

『ミスターエロチスト』は、1967年に梶山季之によって発表された風俗小説です。物語は、主人公である背割皓二郎が、自身の性的倒錯に満ちた人生を回想する形で進行します。幼少期に性への強い関心を抱いた彼は、その欲望の赴くままに、様々な逸脱行為を重ね、ついには犯罪者へと転落していきます。

物語の主軸となるのは、皓二郎の過去の回想ですが、それと並行して、現在の繊維業界を舞台としたスキャンダルも描かれます。この二つの物語が交錯することで、皓二郎の個人的な欲望と、社会全体の腐敗という、二つの異なるレベルでの闇が浮かび上がってきます。

登場人物としては、まず主人公であり、物語の語り手でもある背割皓二郎が挙げられます。彼は産業スパイとして暗躍しており、その行動は常に欲望に突き動かされています。また、彼の性的倒錯の犠牲者となる川端佐知子、そして異母兄弟である背割裕一郎と背割健三郎も物語に深く関わってきます。

この作品は、もともと季刊『別冊文春』で連載される予定でしたが、有馬頼義の病気降板を受けて、急遽、梶山季之が代筆することになったという経緯があります。

『ミスターエロチスト』は、発表後、光文社や徳間書店から単行本や文庫本として出版されており、多くの読者に衝撃を与えてきました。特に、その過激な内容から、賛否両論を巻き起こしましたが、人間の欲望の深淵をえぐり出すような描写は、多くの読者の心を掴んで離しません。

この作品には、靴フェチや産業スパイ、繊維業界など、様々な要素が盛り込まれています。これらの要素が複雑に絡み合い、物語に独特の深みを与えています。

『ミスターエロチスト』は、単なる風俗小説として片付けることはできない、人間の欲望と社会の闇を描いた、非常に読み応えのある作品と言えるでしょう。読後には、人間の心の奥底に潜む欲望について、深く考えさせられることでしょう。

主な登場人物

背割皓二郎: 主人公。物語の語り手。産業スパイとして活動し、幼少期から性的倒錯に悩まされる。
川端佐知子: 被害者。主人公の死姦相手となる女性。
背割裕一郎: 主人公の異母兄。
背割健三郎: 主人公の異母弟。

書誌情報

『ミスター エロチスト』（光文社、1977年）
『ミスター エロチスト』（光文社文庫、1982年）ISBN 978-4195974278
『ミスター エロチスト』（徳間文庫、1983年）ISBN 978-4195974278

関連事項

靴フェチ
産業スパイ
繊維

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