ミスティルテイン

ミスティルテインは、古ノルド語でヤドリギを意味し、北欧の伝承に登場する重要なアイテムです。特に有名なのは、バルドルの死に関わるエピソードと、英雄フロームンドが所有した剣としての登場です。

バルドルの死

北欧神話において、バルドルは美しく、皆から愛される神でしたが、ある時、彼は自身の死を予言する夢を見ます。母フリッグは、息子の身を案じ、あらゆるものに「バルドルを傷つけない」という誓いを立てさせました。しかし、ヴァルハラの西に生えるヤドリギの新芽は、あまりに弱く無害であると考え、誓いを立てさせませんでした。

この情報を知ったロキは、悪巧みを企てます。彼は盲目の神ヘズを唆し、ヤドリギで作った矢をバルドルに投げさせました。その矢がバルドルの体を貫き、バルドルは命を落としてしまいます。この出来事は、北欧神話における悲劇の一つとして語り継がれています。

フロームンド・グリプスソンのサガ

『フロームンド・グリプスソンのサガ』には、デンマークの英雄フロームンドが登場します。彼は、墓所で亡霊の王と戦い、その際に剣「ミスティルテイン」を手に入れます。この剣は、フロームンドに大きな力をもたらし、フンディング殺しのヘルギの生まれ変わりであるハッディンギャルの勇士ヘルギとの戦いを勝利に導きます。

しかし、フロームンドの剣「ミスティルテイン」は、敵の策略によって氷海の底に沈められてしまいます。その後、漁師が釣り上げた巨大な魚の腹の中から発見され、再びフロームンドの手に戻りました。このエピソードは、剣ミスティルテインが単なる武器ではなく、運命に翻弄されながらも英雄と共に在る特別な存在であることを示唆しています。

このように、ミスティルテインはヤドリギという植物でありながら、神話や英雄譚において重要な役割を果たす象徴的な存在です。バルドルの死という悲劇、そして英雄フロームンドの武勇伝、この二つの物語を通して、ミスティルテインは北欧の文化や信仰を今に伝えるキーワードとなっています。

参考文献
* 佐藤俊之、稲葉義明『聖剣伝説』新紀元社、1997年 ISBN 978-4-88317-302-0

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