ミゼットフィルム

ミゼットフィルムとは

ミゼットフィルムは、17.5mm幅のロールフィルムを使用する、日本の写真フィルム規格です。これは、一般的な35mmフィルム（135フィルム）の半分の幅であり、裏紙付きでパーフォレーション（穴）がない点が特徴です。画面サイズは正方形の14×14mm判で、小型カメラの愛好家から人気を集めました。コダックはミゼットフィルムを製造していなかったため、ロールフィルム番号は存在しません。

歴史

ミゼットフィルムは、1937年（昭和12年）に美篶商会（後の美スズ産業）が写真機「ミゼット」とともに発表しました。この「ミゼット」は「世界一最小カメラ」として話題を呼び、大ヒットしました。その後、ミゼットフィルムは日本を中心に発展し、海外にも輸出されました。

第二次世界大戦後、日本では多くの類似製品が製造されました。東郷堂の「ヒット」を筆頭に、多くのメーカーがミゼットフィルムを使用するカメラを販売しました。これらのカメラは「豆カメラ」とも呼ばれ、その小ささから海外では「サブミニチュアカメラ」や「スパイカメラ」とも呼ばれていました。

戦前の3大豆カメラとしては、美篶商会の「ミゼット」、アース光学の「グッチー」、三和商会の「マイクロ」が挙げられます。ただし、アース光学の「グッチー」は、20mmフィルムを使用しており、ミゼットフィルムとは異なる規格です。

1965年には丸惣の「トップ」シリーズが最後の新製品シリーズとして発売されました。フィルムの製造も1970年代まで美篶商会が行っていましたが、その後、一度生産が終了しました。

2016年には、田中商会がミゼットフィルムの製造を再開しましたが、2018年に廃業したため、再び生産が終了しました。

特徴

ミゼットフィルムは、以下の特徴を持っています。

17.5mm幅のロールフィルム: 35mmフィルムの半分の幅です。
裏紙付き: フィルムを光から保護する裏紙が付いています。
パーフォレーションなし: フィルムに送り穴（パーフォレーション）がありません。
14×14mm判の正方形画面: 正方形の画面で写真が撮影できます。

現在の状況

現在、ミゼットフィルムは生産が終了しているため、入手は困難です。ミゼットフィルム用のカメラを使用する場合は、以下の方法でフィルムを自作する必要があります。

パーフォレーションのない長尺の135フィルムを半裁し、裏紙とスプールを使って巻き直す。
裏紙付きの120フィルムを裁断し、スプールに巻き直す。

これらの方法は手間がかかりますが、ミゼットフィルムカメラを愛用する人々の間で試みられています。

主なフィルム製品（全て生産終了）

ミゼットクロームフィルム（1937年発売）: 白黒ネガフィルム、オルソクロマティック、10枚撮、美篶商会
ミゼットパンクロフィルム（1937年発売）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、10枚撮、美篶商会
マイクロクロームフィルム（1940年発売）: 白黒ネガフィルム、オルソクロマティック、10枚撮、三和商会
マイクロパンクロフィルム（1940年発売）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、10枚撮、三和商会
みのりパンクロフィルム（1945年以降発売）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、10枚撮、三和商会
さくらパンクロフィルム（1945年以降発売）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、10枚撮、三和商会
キクフィルム（1950年代発売）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、10枚撮、森田商会
マイティパンクロフィルム（1950年代発売）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、10枚撮、東興写真
ミゼット判フィルム Black&White PAN SS（2016年発売2018年販売終了）: 白黒ネガフィルム、パンクロマティック、ISO感度100、10枚撮、田中商会
ミゼット判フィルム カラー100（2016年発売2018年販売終了）: カラーネガフィルム、ISO感度100、10枚撮、田中商会

主な写真機（全て生産終了）

美篶商会

ミゼット（1937年発売）
ニューミゼット（1939年発売）
ニューミゼットII型（1943年発売）
ニューミゼットIII型（1951年発売）

三和商会

マイクロ（1939年発売）
新型マイクロ（1944年発売）
マイクロ新型（1947年発売）
マイクロI（1947年発売）
マイクロII型（1950年発売）
マイクロIIIA型（1953年発売）

その他のメーカー

ライラビット（富士光）
コメックス（富士光）
ニッコーベビー（富士光）
富士コゼット（富士写真工業社）
メテオール（太陽堂）
ベストカム（太陽堂）
エポック（太陽堂）
ビユティー16（太陽堂）
ラブリー（京都精機）
コロナ（柏精工）
ブロンディー（柏精工）
コロナックス（柏精工）
ジェムフレックス（昭和光学精機）
スナッピー（小西六）
ホープ（菅谷光機）
ミラクル（菅谷光機）
ベビーフレックス（三光）
マスコット（志村精機）
コルト（岡田光学精機）
マイティ（東興写真）
ミニカOL（東興写真）
ミニ（東興写真）
ニューロケット（東京精機）
タッカー（塚田商事）
トーン（東洋光機）
ベスタ（銀鈴）
ヒット（東郷堂）
ベビーマックス（東郷堂）
バルルックス（東郷堂）
トヨカ16（東郷堂）
キュート（東郷堂）
ヒットII（東郷堂）
スイート16（東郷堂）
トヨカエース（東郷堂）
アロー（東郷堂）
ホビー16（東郷堂）
ホーマー16（東郷堂）
プリンスルビー（東郷堂）
サイカ（森田商会）
キク16（森田商会）
キク16II型（森田商会）
ジェム16モデルII（森田商会）
ハルマット（森田商会）
ベビーコロン（ミカド商会）
ホーマー1号（柏原）
ペティート（柏原）
グリコライターカメラ（江崎グリコ）
トップ（丸惣）
トップII型（丸惣）
スパイ14（丸惣）
ゼニックス（製造元不明）
ガンマ（製造元不明）
サン（製造元不明）
サンB（製造元不明）
サン16（製造元不明）
ピース（製造元不明）
ピースIII型（製造元不明）
ミッキー（製造元不明）
ビスタ（製造元不明）
ショーリフレックス（製造元不明）
ピースベビーフレックス（製造元不明）
ピーススモールレフ（製造元不明）
ベル14（製造元不明）
シング88（製造元不明）
ハニー（製造元不明）
プリンス16-A（製造元不明）
コロネット ミゼット（製造元不明）
PETIE（製造元不明）

参考文献

『国産カメラ図鑑』、すぎやまこういち・直井浩明・ジョン・R・ブロック・粟野幹男、スギヤマ工房、改訂版、1985年1月
『昭和10–40年広告にみる国産カメラの歴史』、アサヒカメラ、朝日新聞社、1994年

関連情報

カメラペディア（ウィキア）
camera-wiki.org
* Japanese Subminiture Camera Page


ミゼットフィルムは、そのユニークな規格と小型カメラへの情熱から、写真愛好家にとって特別な存在です。その歴史と魅力を再認識し、未来に語り継いでいくべきでしょう。

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