ミッキー・スピレイン

ミッキー・スピレイン (Mickey Spillane, 本名: フランク・モリスン・マイケル・スピレイン) は、1918年3月9日生まれ、2006年7月17日没のアメリカ合衆国の小説家です。ハードボイルド探偵小説『マイク・ハマー』シリーズで世界的に知られています。

ニューヨークのブルックリンで生まれ、ニュージャージー州の労働者階級の地域で育ちました。敬虔なカトリック教徒であった父の影響を受け、ミドルネームのマイケルは聖ミカエルに由来します。しかし、彼は後にエホバの証人に改宗しています。

スピレインが小説を書き始めたのは、経済的な困窮からでした。1947年、処女作『裁くのは俺だ』(I, the Jury)を出版し、作家デビューを果たします。この作品を皮切りに、暴力描写や性的描写を含む、センセーショナルなハードボイルド小説『マイク・ハマー』シリーズを発表し続けました。

シリーズの主人公、マイク・ハマーは、圧倒的な体力と力強い拳銃さばきで悪を制圧する、タフな私立探偵です。スピレインの独特の文体と、力こそ正義という姿勢は、当時の大衆に大きな衝撃を与え、作品は軒並みベストセラーとなりました。しかし、文壇からはその暴力的な描写や性描写を批判する声が絶えず、高く評価されることはありませんでした。1995年にエドガー賞巨匠賞を受賞したものの、同賞受賞者の中では遅咲きでした。

にもかかわらず、『マイク・ハマー』シリーズは、多くの亜流作品を生み出すなど、ミステリー小説の歴史に大きな影響を与えたことは間違いありません。日本では1953年、早川書房が『大いなる殺人』と『裁くのは俺だ』をハヤカワ・ポケット・ミステリとして刊行したのを皮切りに、シリーズが翻訳出版されました。しかし、アメリカと同様に、日本でもスピレインの作品は肯定的な評価と否定的評価が混在していました。生島治郎や矢作俊彦など、著名な作家からも批判的な意見が表明されていますが、一方で、大藪春彦はスピレインへのオマージュとして『裁くのは俺だ』という作品を発表し、片岡義男は、スピレインの作品をモラリズム小説として高く評価しています。

スピレインの作家活動は、アメリカにおける赤狩りの時期と重なっていました。彼の作品には、共産主義者（Commies）を敵役に描くものもありましたが、1999年のインタビューで、スピレインはマッカーシー上院議員を「愚か者」「まぬけ野郎」と批判しています。また、ポルノ的出版物の追放運動の標的にもなりましたが、スピレインはこうした圧力にも屈することなく、創作活動を続けました。

スピレインの代表作であるマイク・ハマーシリーズの最初の四作品『裁くのは俺だ』『俺の拳銃は素早い』『復讐は俺の手に』『燃える接吻を』のタイトルには、それぞれ一人称代名詞の4つの格変化（I, My, Me, Mine）が含まれています。これは偶然なのか、意図的なものなのかは定かではありません。

スピレインは、自身の小説を映画化したり、映画に出演したりもしています。1954年の映画『恐怖のサーカス』に本人役で出演し、1963年には『ガールハンター』の映画版でマイク・ハマー役を演じました。また、1973年には人気刑事ドラマ『刑事コロンボ』にも出演しています。

晩年まで精力的に作品を発表し続け、多くの未完作品を残しました。これらの未完作品は、他の作家によって完成され、出版されています。彼の作品は、今でも世界中で読まれ、ハードボイルド小説の歴史に大きな足跡を残しています。その作品世界は、多くの作家に影響を与え、現在もなお、多くの読者を魅了し続けています。

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