ミックスト・エモーションズ

ミックスト・エモーションズ：ローリング・ストーンズの複雑な感情

ローリング・ストーンズの楽曲「ミックスト・エモーションズ (Mixed Emotions)」は、1989年発表のアルバム『スティール・ホイールズ』に収録され、シングルとしてもリリースされた作品です。作詞作曲はミック・ジャガーとキース・リチャーズによる共作で、アメリカではBillboard Hot 100で5位、メインストリーム・ロック・チャートでは5週連続1位を獲得するなど大きな成功を収めました。一方、イギリスでは36位とやや振るわなかった点が興味深い対比を見せています。

制作背景：確執からの解放と新たな出発

この曲は、長年にわたるミック・ジャガーとキース・リチャーズの不和が解消された直後に制作されました。1989年1月、二人は和解を果たし、バルバドスで精力的に楽曲制作に取り組み始めます。「ミックスト・エモーションズ」はその初期段階で完成した楽曲の一つであり、歌詞には、複雑な感情を抱える二人の当時の心情が反映されていると考えられています。

なお、キース・リチャーズが1988年に発表したソロアルバム『トーク・イズ・チープ』に収録されている「ユー・ドント・ムーヴ・ミー」との関連性について、「ミックスト・エモーションズのタイトルは、'Mick's demotion（動けないミック）'の語呂合わせではないか？」という噂が流れましたが、本人はこれを否定しています。

楽曲の特徴と収録状況

「ミックスト・エモーションズ」は、アルバム『スティール・ホイールズ』からの先行シングルとしてリリースされ、B面にはアルバム未収録の「ファンシー・マン・ブルース」が収録されました。さらに、クリス・キムゼイによるリミックスバージョンは、12インチ・シングルとコンピレーション・アルバム『レアリティーズ 1971-2003』に収録されています。

この曲は、その後リリースされたストーンズの公式ベストアルバムにも全て収録されており、彼らの代表曲としての地位を確固たるものとしています。

レコーディングメンバー

ミック・ジャガー：リード＆バッキングボーカル、エレキギター、シェイカー
キース・リチャーズ：エレキギター、バッキングボーカル
ロン・ウッド：エレキギター
ビル・ワイマン：ベース
チャーリー・ワッツ：ドラムス
チャック・リーヴェル：ピアノ、オルガン
キック・ホーンズ：ブラス
ルイス・ジャルディン：パーカッション
* サラ・ダッシュ、リサ・フィッシャー、バーナード・ファウラー：バッキングボーカル

ライブパフォーマンス：挑戦と困難

『スティール・ホイールズ』リリース後に行われた「スティール・ホイールズ～アーバン・ジャングル・ツアー」では、「ミックスト・エモーションズ」は頻繁に演奏されました。しかし、その後は長らくライブで演奏されることはなく、2016年のツアーで再び披露されるまで、長期間にわたってライブステージから姿を消していました。2020年には、「スティール・ホイールズ～アーバン・ジャングル・ツアー」での演奏が収録された限定ライヴアルバム『スティール・ホイールズ・ライヴ』がリリースされています。

ミック・ジャガー自身は、この曲のライブ演奏について、「いい曲だが、ライブで演奏するのは非常に難しい。歌メロが非常にハードだが、コーラスはメロディアスで、俺はそういうのが好きなんだが、何度歌っても上手くいかないんじゃないかって不安な気持ちになる」とコメントしており、楽曲の難易度を語っています。

まとめ

「ミックスト・エモーションズ」は、ローリング・ストーンズの複雑な人間関係と、その中で生まれた音楽的創造性の高さを象徴する楽曲と言えるでしょう。メンバー間の確執と和解、そしてその感情が複雑に絡み合った楽曲は、今もなお多くのファンを魅了し続けています。そのヒットチャートにおける成功と、ライブ演奏における困難さという対比も、この曲の魅力を際立たせる要素となっています。

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