ミツバフウロ

ミツバフウロ（三葉風露）

ミツバフウロ（学名：Geranium wilfordii）は、フウロソウ科フウロソウ属に属する多年草の一種です。その名の通り、葉が3つに深く裂けているのが特徴で、別名フシダカフウロとも呼ばれます。この記事では、ミツバフウロの形態、分布、生育環境、分類、近縁種との比較、利用、そして保全状況について詳しく解説します。

形態

ミツバフウロの茎は30cmから80cmほどの高さに成長し、基部は地面を這うように倒れ、よく枝分かれします。茎の上部には、下向きの毛が密生しています。葉は対になって生え、長い柄を持ちます。葉身は幅1.5cmから10cmで、3つに深く裂けており、裂片には鋸歯があります。葉の表面と裏面の脈上には細い毛が生えています。托葉は膜質で狭い三角形をしています。

花は7月から10月にかけて咲き、直径1cmから1.5cmほどの薄紫色の花を、長い花柄の先に1つか2つ上向きに付けます。花柄と小花柄には下向きの毛が密生しています。花弁と萼片はそれぞれ5枚で、萼片は花弁より少し短く、3本の脈があり、脈上には短い毛が生えています。雌しべは10本あり、長さは約6mmです。朔果は花柱分枝と共に長さ約2cmになり、果体には開出した長毛と細毛が密生し、嘴には細毛が密生しています。花柱分枝は長さ4.5mmから2mmです。果実は熟すと下方から裂開し、種子を弾き飛ばします。染色体数は2n=28です。

分布と生育環境

ミツバフウロは、中国（東北部を含む）、朝鮮半島、ロシア連邦アムール州、そして日本にかけての温帯から暖帯に分布しています。日本では、北海道、本州、四国、九州に広く分布し、平地や山地の草むらに生育しています。

分類

ミツバフウロには、以下の変種と品種が知られています。

ブコウミツバフウロ（Geranium wilfordii f. bukoense）：埼玉県の武甲山に分布し、茎や葉柄に開出毛が目立ちます。
エゾミツバフウロ（Geranium wilfordii var. yezoense）：北海道に分布し、葉の裏全面に短い伏毛があります。別名エゾノミツバフウロとも呼ばれます。
タカオフウロ（Geranium wilfordii var. chinense）：東京都の高尾山に分布し、萼片の外面に開出毛があります。
ホコガタフウロ（Geranium wilfordii var. hastatum）：栃木県日光市に分布し、葉の裂片が細かく、側裂片が鉾形に張り出し、萼片の脈上に開出毛があります。

これらの変種は、地理的な変異によるものと考えられています。

近縁種

ミツバフウロは、同じフウロソウ属のゲンノショウコ（Geranium thunbergii）と形態がよく似ていますが、植物体の腺毛の有無などで識別できます。ゲンノショウコも日本国内に広く分布しており、ミツバフウロと同じ地域で見られることがあります。これらの地域では、両種が混ざり合わずにパッチ状に棲み分けていることが確認されており、雑種も存在します。

利用

ミツバフウロは、同属の薬草であるゲンノショウコと同様に、タンニンの大部分がゲラニインから構成されています。乾燥した全草からのゲラニインの粗結晶収率は2.2%と、ゲンノショウコより少ないものの、代用薬としての価値があると考えられています。

種の保全状況評価

日本では、ミツバフウロは以下の都道府県でレッドリストの指定を受けています。生息地の開発や環境遷移により、個体数が減少している地域や、生息域が極めて局所的な地域があります。

絶滅危惧IA類(CR): 山形県、宮崎県
絶滅寸前種: 奈良県
絶滅危惧IB類(EN): 神奈川県、愛知県
絶滅危惧II類(VU): 三重県、岡山県
* 準絶滅危惧(NT): 石川県、秋田県、富山県

ミツバフウロは、その美しい姿と生態的な特徴から、注目すべき植物の一つです。しかし、生育環境の変化により、その存続が脅かされている地域も存在します。今後、適切な保全策を講じることで、ミツバフウロが末永く日本の自然の中で生き続けることを願います.

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