ミネルバ (ローバー)

ミネルバ（MINERVA）とは？

ミネルバ（MIcro/Nano Experimental Robot Vehicle Asteroid）は、2003年5月9日に打ち上げられた日本の小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された小型の探査ローバーです。この探査機は、後に続くはやぶさ2に新たなミネルバIIを搭載するなど、その後の宇宙開発においても重要な役割を果たしました。

開発の背景

ミネルバの開発は、1995年に宇宙開発委員会によって承認された小惑星サンプルリターン計画、MUSES-Cの一環として始まりました。この計画では、アメリカのNASAと協力関係を結び、同機に搭載することが決まった超小型ローバーMUSES-CNが選ばれていましたが、日本独自のローバーを搭載する必要があるとの考えから、1997年からミネルバの開発に着手しました。

当初、ミネルバは探査機のバランスを取るためのオプション扱いとされ、厳しい重量制限や資金不足が課題でした。これに対処するため、ミネルバはホップ移動機構を採用し、内部モーターの回転によってトルクを発生させて自走する設計がなされました。これは、従来の車輪を利用した方式ではなく、特に小惑星の重力が非常に小さい環境での適応を目指すものでした。

技術的課題と解決策

ミネルバの設計においては、重量と大きさの制限を考慮しながら、様々な新技術の導入が試みられました。まず、移動機構としてはホッピング方式を採用し、摩擦力を利用することに加え、ホップの速さの調整をすることで小惑星の脱出速度を超えないように工夫しました。開発には宇宙科学研究所と日産自動車宇宙航空事業部が協力し、民生品を積極的に使用してコストを削減しましたが、重量や大きさ制限も厳しく資金調達の面で苦労が続きました。

特に電源問題では、太陽電池とともに、ホッピング時に必要な大電力を供給するために、宇宙空間で初めて電気二重層コンデンサを採用しました。これにより、温度変化にも耐えられる安定した電源が確保されました。

実施されたミネルバの運用

2003年5月9日に打ち上げられたミネルバは、はやぶさとともに小惑星イトカワに向けて旅をしました。途中、時折機器のチェックを行い、2005年9月には目的地に到着しました。イトカワへの着陸を試みた際に、ミネルバは分離される予定でしたが、内部的な手続きミスから着陸に失敗してしまい、結果的に小惑星に着地することなく宇宙に漂うことになりました。

分離後の18時間にわたる通信では、ミネルバは内部の温度データや少量の写真データを地球へ送信しました。しかし、小惑星表面での直接的な観測は実現できませんでした。とはいえ、ミネルバはホッピングによる移動メカニズムのテストや、自律型探査手法の実証を行うことができました。

ミネルバIIへの発展

ミネルバの運用結果を基に、2014年には、はやぶさ2に搭載されるミネルバ-IIシリーズが開発されました。これにより、小惑星への探査の新しい可能性が開かれ、ミネルバの成功はその後の宇宙探査に強い影響を与えることとなりました。ミネルバとそれに続くミネルバIIは、探査機の自律性やホッピング移動機構を通じて、宇宙探査の技術革新において重要な役割を果たしています。

結論

ミネルバは、日本初の宇宙探査用ローバーとして、挑戦的な宇宙探査の実現に向けた重要な第一歩となりました。その経験は、さらなる技術的進歩を求める探査ミッションの礎となり、未来の探査機開発においても深い示唆を提供しています。

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