ミノタウロスC

ミノタウロスC：ペガサスロケットの進化系

ミノタウロスCは、ノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズ社（旧オービタル・サイエンシズ社）が開発した、人工衛星打ち上げ用の使い捨てロケットです。その歴史は、ペガサスロケットの地上発射型として開発された「トーラス」に遡ります。国防高等研究計画局（DARPA）の支援を受け、中型ロケットと小型ロケットの中間を埋める能力を目指して開発されました。当初はSSLV（Standard Small Launch Vehicle）と呼ばれ、1989年に開発契約が締結されました。

トーラスは、政府機関や民間企業の人工衛星打ち上げ、そして全段固体燃料ロケットならではの即応性から、軍事衛星の打ち上げにも適していました。1994年の初飛行から2011年までに10機の打ち上げが行われましたが、2009年と2011年には連続して打ち上げに失敗しました。この失敗は、ロケットの再設計と名称変更のきっかけとなり、改良を加えられたロケットは「ミノタウロスC」として生まれ変わりました。CはCommercial（商業用）を表しています。

ミノタウロスCの構成と性能

ミノタウロスCは、4段または5段構成の全段固体燃料ロケットです。ペガサスロケットとの関係から、初段は「第0段」と表記されます。ロケットの各段のモーターは、ATKランチ・システムズ・グループ（旧チオコール）が製造しました。第0段ブースターには、ピースキーパーICBMの第1段であるTU-903やキャスター120が使用されました。上段モーターはペガサスとほぼ同じですが、翼や可動ノズル推力偏向制御（MNTVC）の有無による姿勢制御方式の違い、そして推進剤量の差異が見られました。5段目のモーターはオプションでしたが、2008年までは使用されませんでした。

ミノタウロスCの構成は、4桁の数字で分類されます。おおまかに、1000番台のSSLVトーラス（軍事用）、2000番台の標準型トーラス（商業用）、3000番台のトーラスXL（商業用、増強型）の3種類に分けられます。さらに、フェアリングや第3段の種類、第4段の有無によって、より細かく分類されました。

SSLVトーラス（1000番台）: DARPAまたは空軍向けに開発された軍事用ロケット。第0段ブースターにはTU-903が使用され、3機全てが打ち上げに成功しました。
標準型トーラス（2000番台）: 商業用打ち上げ向けの標準型。第0段ブースターにキャスター120を使用。3機の打ち上げで1機が失敗。
* トーラスXL（3000番台）: 商業用打ち上げ向けの増強型。1段目と2段目にペガサスXLと同じ拡張型モーターを使用し、軌道投入能力が向上しました。4機の打ち上げで2機が失敗しました。

すべての打ち上げは、ヴァンデンバーグ空軍基地のLC-576E発射場から行われました。

ミノタウロスC関連技術と後継機

ミノタウロスCの技術は、他のプロジェクトにも応用されました。例えば、アメリカミサイル防衛局の地上配備型ミッドコース防衛システム（GMD）では、大気圏外迎撃体（EKV）を搭載したオービタル・ブースト・ビークル（OBV）が開発され、これはトーラス・ライトとして考案されました。これは、トーラスXLの第0段ブースターを取り除き、第1段ノズルを地上発射用に改良したものです。

ミノタウロスCの後継機として、オービタル・サイエンシズ社はNASAとの商業軌道輸送サービス（COTS）契約に基づき、「アンタレス」ロケットを開発しました。アンタレスは、液体燃料ロケットで、トーラスとは異なり、第1段にAJ26-62エンジンを2基搭載しています。2013年に初打ち上げが行われました。ミノタウロスCは、その実績と技術的発展を通じて、後のロケット開発に大きな影響を与えたと言えます。

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