ミノタウロスI

ミノタウロスI：軍事技術を転用した小型衛星打ち上げロケット

ミノタウロスIは、アメリカ合衆国で運用されていた使い捨て型の小型衛星打ち上げロケットです。その最大の特徴は、大陸間弾道ミサイル（ICBM）であるミニットマンIIミサイルの技術を流用している点にあります。具体的には、ミニットマンIIミサイルの第一段目と第二段目のブースターを再利用することで、コスト効率の高いロケットを実現しています。

ロケット構成と性能

ミノタウロスIは、主にミニットマンIIミサイルの第一段目（M55A1）と第二段目（SR19）を使用し、これらにペガサスロケットのOrion 50XLおよびOrion 38を三段目および四段目として追加することで構成されています。さらに、必要に応じてHAPSを五段目として搭載することも可能でした。この構成により、高度約185kmの低軌道に最大580kgのペイロードを搭載して打ち上げることができました。

信頼性の高い運用実績

2000年1月27日、ヴァンデンバーグ空軍基地から初打ち上げが行われ、2013年11月までに計11回の打ち上げ全てにおいて成功を収めました。2006年12月からは、ワロップス島の中部大西洋地域宇宙基地からも打ち上げられるようになり、運用拠点の選択肢が広がりました。

独自の安全システムとコスト削減への取り組み

ミノタウロスIは、ICBMを転用したロケットであるため、本来はサイロ内での使用を想定した設計でした。そのため、屋外での打ち上げに対応するため、発射台に設置された機体下部には、温度を維持するための断熱カバーが備え付けられていました。

11機目の打ち上げでは、コスト削減と次世代の射場追跡システムの検証を目的に、革新的な安全システムが導入されました。このシステムは、ロケットに搭載されたGPS追尾システムを利用し、ロケット自身の飛行位置をリアルタイムで把握します。そして、予定の飛行軌跡から外れた場合には、自動的にロケットを破壊する機能を備えていました。このようなスマートな射場安全システムは、2012年2月24日にアトラスVロケットで初めて実証された技術を応用したものでした。

まとめ

ミノタウロスIは、軍事転用技術を巧みに活用し、コスト効率と信頼性を両立させた小型衛星打ち上げロケットでした。その運用実績と、安全システム導入への積極的な取り組みは、宇宙開発における技術革新の重要な一例として記憶されています。 ミニットマンIIミサイルの成功が、ミノタウロスIという新たな宇宙開発の道を切り開いたと言えるでしょう。今後、同様の軍事転用技術を用いた宇宙開発がどのように発展していくのか、注目に値します。

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