アトラスV

アトラスVロケット：アメリカを代表する使い捨て型ロケット

アトラスV（アトラスファイブ、Atlas V）は、アメリカ合衆国で運用されている使い捨て型ロケットであり、21世紀初頭に運用が開始されたアトラス・ロケットシリーズの最新型です。当初はロッキード・マーティンが運用していましたが、現在はロッキード・マーティンとボーイングの合弁会社であるユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）が運用を担当しています。

特徴

アトラスVは、第1段にロシア製のRD-180エンジンを使用し、第2段にはアメリカ製のRL-10エンジンを使用するという、国際的な協力によって成り立っているロケットです。

第1段：RD-180エンジン
RD AMROSSから供給されるRD-180は、ケロシンと液体酸素を推進剤とする強力なエンジンです。
第2段：セントール
プラット&ホイットニー・ロケットダインから供給されるRL-10は、液体水素と液体酸素を燃焼させる高性能エンジンです。
補助ロケット（固体燃料ロケット）
エアロジェット製の補助ロケットを第1段の周囲に取り付けることで、打ち上げ能力を向上させることができます。
ペイロードフェアリング
RUAGスペース社が製造するペイロードフェアリングは、直径4または5m、3種類の長さがあり、搭載する貨物に合わせて選択可能です。

製造

アトラスVは、アラバマ州ディケーター、テキサス州ハーリンジェン、カリフォルニア州サンディエゴ、そしてULAの本社近くであるコロラド州デンバーで製造されています。

実績と信頼性

アトラスVは、2012年6月時点でほぼ完璧に近い成功率を誇ります。2007年には、打ち上げられたNROのNROL-30ミッションにおいて、セントールロケットの燃焼が予定より早く停止したため、衛星が予定より低い軌道に投入されるという事態が発生しましたが、NROはこの打ち上げを成功としています。この高い信頼性を背景に、ロッキード・マーティンは2014年3月、打ち上げが完全に失敗した場合に打ち上げ費用を100%補償するというプログラムを導入しました。

販売終了と後継機

2021年8月、ULAはアトラスVの販売停止を発表しました。残りの打ち上げ予定回数は29回です。後継機は、メインエンジンにアメリカ製のBE-4を採用したヴァルカンであり、2024年1月8日に初打ち上げに成功しました。

歴史

アトラスVは、アトラスシリーズの中で最新の機種であり、アトラスIIIと比較して多くの変更が加えられています。アトラスIIと比較すると、再設計に近いと言えるでしょう。なお、アトラスIVは存在しません。

主な変更点

1.5段技術の廃止
アトラスIIで使用されていた1.5段技術は廃止され、アトラスIIIと同じRD-180エンジンが搭載されました。
第1段の直径拡大
第1段の直径が10フィートから12.5フィートに拡大されました。
タンク構造の変更
タンクはアイソグリッド構造のアルミニウム製となり、内圧をかけなくても安定するようになりました。
断熱
アルミニウムを使用することにより、液体酸素の断熱が必要になり、タンクはポリエチレンを基にする層で覆われています。

アトラスVは、アメリカ空軍の発展型使い捨てロケット計画の一環として開発されました。打ち上げは、ケープカナベラル空軍基地の第41発射施設とヴァンデンバーグ空軍基地の第3発射施設から行われます。

技術

アトラスVの第1段は、直径12.5フィート、全長106.6フィートで、液体酸素とRP-1を推進剤として使用します。第1段ロケットは約4分間作動し、約4MNの推力を生み出します。この推力の大部分は、ロシア製のRD-180エンジンによるものです。

セントール上段エンジンは、タンク内を加圧することで維持する設計の低温推進剤タンクです。アトラスVのセントールは5.5フィート延長され、1基または2基のRL10A-4-2エンジンを使用します。それぞれのエンジンの推力は99.2kNです。

今後の開発

アトラスV HLV

アトラスV HLV (Heavy Lift Vehicle) は、3基のコモン・コア・ブースター (CCB) を束ねることで、低軌道へ25トンの投入能力を持つことが計画されていました。しかし、2015年3月、ULAはアトラスV HLV仕様の開発は行わず、次世代打ち上げシステムであるヴァルカンに集中することを明らかにしました。

GXロケット

第1段にアトラスV のコモン・コア・ブースター、第2段にLNG/LOXを推進剤とする新型ロケットエンジンを使用したGXロケットの開発がアメリカと日本の共同で行われる予定でしたが、2009年12月に計画は中止されました。

アトラス・フェイズ2

ボーイングとロッキード・マーティンが運用するULAは、デルタ IVに使用される直径5mの生産設備を活用する構想を持っていました。直径5mの1段目と2基のRD-180エンジンにより重量物打ち上げロケットとして "アトラス・フェイズ2" を開発する予定でした。

形式

アトラスVロケットは、ロケットの構成から決まる3桁の数字の名称を持ちます。100の位の数字はノーズコーンフェアリングの直径を表し、10の位の数字は第1段に取り付けられる固体燃料補助ロケットの本数を表します。最後に1の位の数字はセントールロケットに搭載されるエンジンの個数を示しています。

アトラスVには2種類のフェアリングの大きさがあり、従来のフェアリングはペイロードのみを覆いセントールは大気に晒されますが、コントラベス社のフェアリングはペイロードと同様にセントール上段ロケットも覆います。

まとめ

アトラスVは、長年にわたりアメリカの宇宙開発を支えてきた信頼性の高いロケットです。販売は終了しましたが、後継機であるヴァルカンがその役割を引き継ぎ、今後の宇宙開発に貢献していくことが期待されます。

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