ミハイル2世・アセン

ミハイル2世アセン：動乱の時代を生きたブルガリア皇帝

ミハイル2世アセン（1238年/1241年 - 1256年）は、第二次ブルガリア帝国の皇帝（ツァール）として、1246年から1256年までの短い期間にわたり在位しました。彼は、イヴァン・アセン2世とエピロス専制侯国の王女イレネ（イリニ）の間に生まれました。

幼少での即位と領土の喪失

異母兄であるカリマン1世が毒殺された後、ミハイル・アセンは幼くして帝位を継承しました。しかし、その幼さゆえに、周辺諸国はブルガリアへの侵攻を開始します。ニカイア帝国、エピロス専制侯国、ハンガリー王国などが領土を狙い、ブルガリアは広範囲にわたる領土を失うこととなりました。ニカイアはセレス、テッサロニキ、アドリアノープル、ロドピ山脈地方を含むトラキアを、エピロスはマケドニアの大部分を、ハンガリーはベオグラードをそれぞれ併合しました。

外交と軍事

領土を失いながらも、ブルガリアは外交と軍事において一定の活動を行います。1247年には、ラテン帝国と戦うニカイアへの協力を強いられました。1253年には、ドゥブロヴニクと軍事・商業協定を締結し、ステファン・ウロシュ1世が統治するセルビア王国を攻撃しました。ブルガリア軍はセルビア領内深くへと進攻しますが、セルビアの征服は失敗に終わります。

失地回復への試みとニカイアとの戦い

1254年にニカイア皇帝ヨハネス3世が亡くなると、ブルガリア国内では失地回復の機運が高まります。ミハイルは自ら軍を率いてトラキアに進攻し、ロドピ山脈地方の城砦を回復することに成功しました。しかし、ニカイアの新皇帝テオドロス2世は迅速に態勢を立て直し、ブルガリア軍に奇襲をかけます。ミハイルは森林を通過して逃亡する際に負傷するという失態を演じました。1255年には、クマン人の血族とともにニカイアへの反撃を試み、当初は勝利を収めたものの、最終的には1256年に和平を結ぶこととなりました。

宮廷内の権力闘争と暗殺

ニカイアとの和平条約において、ミハイルとその義父ロスチスラフ・ミハイロヴィチが行った譲歩に対し、貴族たちは不満を募らせ、ミハイルの甥であるカリマンを擁立します。そして、1256年の秋、ミハイルはタルノヴォ近郊での狩猟中に、政敵によって暗殺されました。

治世の特徴

史料が少ないため、ミハイルの治世について詳細を知ることは困難ですが、彼の治世のほとんどが宮廷内の有力者の影響下にあったことは確かです。治世の初期には母親のイレネが、ドゥブロヴニクとの同盟締結時には義兄弟のセヴァストクラトル・ペタルが国政の中心となっていました。治世の末期には、ベオグラードとブラニチェヴォの総督を務めたロシア貴族ロスチスラフ・ミハイロヴィチの意向が強く反映されていました。ミハイルは1255年にロスチスラフ・ミハイロヴィチの娘（アンナまたはエルジェーベト）と結婚し、1256年のブルガリアとニカイアの和平条約では、ロスチスラフが仲介者として署名しています。ミハイルの死後、彼の妃は帝位を継いだカリマン2世と再婚しました。

ミハイル2世アセンの治世は、ブルガリア帝国が衰退に向かう時代の、宮廷内の権力闘争と周辺諸国の侵略に翻弄された、激動の時代であったと言えるでしょう。

参考文献
* John V.A. Fine, Jr., The Late Medieval Balkans, Ann Arbor, 1987.

もう一度検索