ミヒャエル・ナナサコフ

ミヒャエル・ナナサコフ（Michael Nanasakov）

ミヒャエル・ナナサコフは、自動演奏ピアノやMIDI音源といったデジタル技術を駆使して楽曲を再現する、仮想上のピアニストです。その正体は、日本の調律師でありプロデューサーでもある七澤順一氏であり、氏個人のプロジェクトとして運営されています。

概要

ナナサコフには、「1955年、リトアニアのヴィルニス生まれ。レオポルト・ゴドフスキーと同郷の出身。12歳で著名なアロイジオ神父に師事し、音楽理論と即興演奏を習得。その後、ピアノそのものに惹かれ、調律技術を学ぶ。1989年、バルト三国の民族問題が緊迫する故郷を離れ、アメリカに亡命した」という詳細な架空の経歴が設定されています。

七澤氏がこの活動を始めた動機は、「自身が聴きたい特定のピアノ作品が、他の演奏家によってほとんど取り上げられない」という思いからでした。1991年には、演奏至難な作品として知られるゴドフスキーによる『ショパンのエチュードによる練習曲』の抜粋を発表し、「デビュー」を飾りました。2013年9月時点では、公の場での演奏会は一切行っておらず、その活動は録音作品の制作・発表に限定されています。

彼のレパートリーは非常に特徴的で、シャルル＝ヴァランタン・アルカン、レオポルト・ゴドフスキー、カイホスルー・シャプルジ・ソラブジといった、通常のピアニストにとっては極めて難易度が高いか、あるいはあまり演奏されない作曲家の作品が中心です。特にアルカンが編曲したヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の録音は、世界で初めて行われたものとして特筆されます。

過去にはソラブジ作品のCDが発売中止になったことを契機に、一時的に活動を停止していた期間がありました（これを「長期的な創作上の停滞」と表現することもあります）が、2009年からは再び積極的に録音活動を再開しています。

ディスコグラフィ

ミヒャエル・ナナサコフ名義で発表された録音は、全てプライベートレーベルである「Nanasawa Articulates」からリリースされています。

• - 『レオポルト・ゴドフスキー：ショパンのエチュードによる53の練習曲より27曲』 (1991年) - デビュー作
• - 『Ch.V.アルカン：短調による12の練習曲』 (1998年)
• - 『レオポルト・ゴドフスキー：ピアノ編曲によるバッハ・ヴァイオリンソナタ』 (2000年)
• - 『レオポルト・ゴドフスキー：ピアノ編曲によるバッハ・無伴奏チェロ組曲』 (2000年)
• - 『Ch.V.アルカン：ALKAN in 1837』 (2001年)
• - 『セルゲイ・ラフマニノフ：ピアノ協奏曲第2番、第3番（ピアノ2台用編曲）』 (2009年) - 活動再開後のリリース
• - 『セルゲイ・ラフマニノフ：ピアノ協奏曲第1番、第4番、パガニーニの主題による狂詩曲（ピアノ2台用編曲）』 (2010年)
• - 『レオポルト・ゴドフスキー：ショパンのエチュードによる練習曲全曲 + α（59曲）』 (2010年)
• - 『プロコフィエフ：ピアノ協奏曲第1番、第2番、第3番（ピアノ2台用編曲）』 (2013年)
• - 『スクリャービン：交響曲第3番（四手連弾用編曲）、第5番（ピアノ2台用編曲）他』 (2015年)
• - 『ブランデンブルク協奏曲（全曲）ピアノ独奏用編曲』 (2016年)
• - 『チャイコフスキー交響曲4番、6番（ピアノ2台8手版）』 (2017年)
• - 『眠れる森の美女（全曲）ピアノ独奏版』 (2018年)
• - 『くるみ割り人形 ピアノ独奏版』 (2019年)

ミヒャエル・ナナサコフは、仮想の存在でありながら、その特異なレパートリーと技術によって、特定の音楽愛好家や研究者にとって重要な存在となっています。公式サイトやSNS、YouTubeチャンネルでは、その活動や演奏の一部を知ることができます。

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