カモメ科

カモメ科（Laridae）

カモメ科は、チドリ目に分類される鳥類の科であり、カモメ類、アジサシ類、ハサミアジサシ類など、多様なグループを含んでいます。以前はカモメ科、アジサシ科、ハサミアジサシ科を別々の科として扱うこともありましたが、現在ではこれらをまとめてカモメ科とする分類が一般的です。カモメ科は、その多様な形態と生態から、鳥類の研究において重要な位置を占めています。

分布

カモメ科の鳥類は、極地を除く全世界の海洋や内水域に広く分布しています。カモメ類は熱帯から亜[[熱帯]]地域に多く見られる一方で、アジサシ類は温帯から寒帯地域に分布する傾向があります。このように、カモメ科の鳥類は、非常に広範囲な地域に生息しており、さまざまな環境に適応していることがわかります。

形態

カモメ科の鳥類は、その形態も多様です。最大種であるオオカモメは全長76cmにも達しますが、小型種も存在します。共通の特徴としては、後肢の趾の間に水かきがあることが挙げられます。これにより、水中での移動や採餌が容易になっています。卵の色は褐色や緑みを帯びたものが多く、暗色の斑紋が入っているのが特徴です。

生態

カモメ科の鳥類の多くは海洋に生息していますが、内陸部の湖沼や湿原に進出する種もいます。食性は動物食であり、魚類、昆虫類、甲殻類、軟体動物、貝類などを捕食します。また、小型の鳥類や哺乳類、動物の死骸を食べることもあります。採餌方法は、海面近くを飛翔して嘴で獲物を捕らえる、上空から急降下して潜水して捕らえるなど、多様です。また、他の鳥類が捕らえた獲物を横取りする行動も見られます。繁殖期にはペアを形成し、多くの種ではペアは一生解消されないと考えられています。また、集団繁殖地（コロニー）を形成する種もいます。1回の産卵数は1-3個です。

系統と分類

カモメ科は、伝統的に以下の3つの亜科に分けられています。

ハサミアジサシ亜科 (Rynchopinae): ハサミアジサシ類が含まれます。
カモメ亜科 (Larinae): カモメ類が含まれます。
アジサシ亜科 (Sterninae): アジサシ類が含まれます。

ただし、アジサシ亜科に分類されるクロアジサシ属、ハイイロアジサシ属、シロアジサシ属については、系統的な位置づけが議論されています。これらの属は、カモメ科の基底に位置すると考えられていますが、分類の詳細は未だ確定していません。また、ハサミアジサシ亜科はカモメ亜科の姉妹群と考えられていますが、アジサシ亜科の姉妹群である可能性も指摘されています。カモメ科と近縁なグループとしては、ウミスズメ科、トウゾクカモメ科、カニチドリ科が挙げられますが、カモメ科の姉妹群が具体的にどのグループなのかはまだ明確になっていません。

カモメ科の範囲

カモメ科の範囲をどのように定義するかについては、複数の見解があります。かつては別科とされていたアジサシ科やハサミアジサシ科をカモメ科の亜科とする説や、カモメ科とハサミアジサシ科の2科に分ける説もあります。しかし、系統的な解析の結果、クロアジサシ属、ハイイロアジサシ属、シロアジサシ属が基底に位置することが示唆されており、これらの分類は系統的ではないと考えられています。また、トウゾクカモメ科をカモメ科に含める説もありますが、近年ではこの姉妹関係を否定する研究も多くなっています。

属

国際[[鳥類学会議]] (IOC) の分類では、カモメ科は23属102種で構成されています。

アジサシ亜科 (Noddies)

クロアジサシ属 (Anous)：クロアジサシ、ヒメクロアジサシなど
ハイイロアジサシ属 (Procelsterna)：ハイイロアジサシなど
シロアジサシ属 (Gygis)

ハサミアジサシ亜科

ハサミアジサシ属 (Rynchops)：クロハサミアジサシ、アフリカハサミアジサシなど

カモメ亜科

アカメカモメ属 (Creagrus)
ミツユビカモメ属 (Rissa)：ミツユビカモメ、アカアシミツユビカモメ
ゾウゲカモメ属 (Pagophila)
クビワカモメ属 (Xema)
Chroicocephalus：ボナパルトカモメ、ユリカモメ、ズグロカモメなど
ヒメカモメ属 (Hydrocoloeus)
ヒメクビワカモメ属 (Rhodostethia)
Leucophaeus：イワカモメ、ワライカモメ、アメリカズグロカモメなど
Ichthyaetus：ゴビズキンカモメ、オオズグロカモメ、メジロカモメなど
カモメ属 (Larus)：ウミネコ、カモメ、オオカモメ、セグロカモメなど

アジサシ亜科 (excl. Noddies)

ハシブトアジサシ属 (Gelochelidon)
オニアジサシ属 (Hydroprogne)
Thalasseus：オオアジサシ、ベンガルアジサシ、サンドイッチアジサシなど
Sternula：コアジサシ、ヒメアジサシなど
Onychoprion：コシジロアジサシ、マミジロアジサシ、セグロアジサシなど
アジサシ属 (Sterna)：ベニアジサシ、アジサシ、キョクアジサシなど
クロハラアジサシ属 (Chlidonias)：クロハラアジサシ、ハジロクロハラアジサシなど
オオハシアジサシ属 (Phaetusa)
インカアジサシ属 (Larosterna)

人間との関係

カモメ科の鳥類は、漁港に生息する種も多く、残飯を漁る姿がよく見られます。しかし、開発による生息地の破壊、水質汚染、卵の採集、人為的に移入された動物による捕食などにより、生息数が減少している種もいます。これらの問題に対する対策が求められています。

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出典

『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社、1984年、79頁。
黒田長久監修 C.M.ペリンズ、A.L.A.ミドルトン編 『動物大百科8 鳥類II』、平凡社、1986年、32–43、157–158頁。
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小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』、講談社、2000年、84、176頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ7 オーストラリア、ニューギニア』、講談社、2000年、84、176頁。
真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、287–333頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』、講談社、2001年、71、192–193頁。
小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『レッド・データ・アニマルズ8 太平洋、インド洋』、講談社、2001年、76、197頁。
『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年、62–65頁。

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