ミラージュIII V (航空機)

ミラージュIII V（Mirage III V）の概要

ミラージュIII Vは、フランスによって開発された戦闘機であり、特に垂直離着陸能力を重視した設計が特徴です。しかしながら、実際の運用には至らず、試作機としての位置付けに留まりました。

開発の背景

ミラージュIII Vは、かつてのバルザック Vの研究成果を基にしており、この機体はさらにエンジン出力を強化し、実用性を高めることを目指していました。フランス政府は、このプロジェクトをアビオン・マルセル・ダッソーとシュド・アビアシオンに託し、様々な技術的な挑戦を克服しようとしました。

プロジェクトの発足

当初、フランスは垂直離着陸機の基礎実験を行っており、バルザック Vという巨大な機体を使用していました。その後、ミラージュIII Vは、このバルザック Vのさらなる発展版として設計されました。具体的には、8基のロールス・ロイス RB162エンジンをリフトエンジンとして採用し、主推進用エンジンにはプラット・アンド・ホイットニー製のTF106を使用することが決まりました。

試験段階と初飛行

1961年8月、NATOからはNBMR3（基本軍事要求3）が出され、ここに北海道北大西洋条約機構が求める垂直離着陸戦闘機という条件が加わりました。ミラージュIII Vは1962年にホーカー・シドレー P.1154と共にこの要求に応えました。

最初、改造された試験機ミラージュIII Tが登場しましたが、JTF10エンジンは問題が発生し、実際の飛行が行えませんでした。その後、1965年にSNECMA TF106を搭載したミラージュIII V 01が初めて飛行を成功させ、そのデザインとエンジン性能が多くの期待を集めました。しかし、この段階ですでにコストの問題が製造に影響を与え始めていました。

製造中止へ

1966年には、ミラージュIII Vがホバリングから水平飛行への移行に成功した一方で、コスト面からの厳しい評価が下されました。特に垂直離着陸と通常飛行の切り替えが難しいとの判断が下され、正式な生産へは至らず、試験段階を余儀なくされました。

6月にはNATO自体も超音速垂直離着陸機の計画を中止。多くの期待を背負っていたミラージュIII Vは、その運命の最中で次第に影が薄くなっていきました。

最後の試験と計画の終焉

最終的に、1966年にSNECMA TF306エンジンを搭載したミラージュIII V 02が飛行試験を行い、快挙としてマッハ2.03を達成しますが、同年11月の事故で機体を喪失。その結果、プロジェクトは完全に終了することとなりました。

要目

• - 全長: 16.3 m
• - 全幅: 8.8 m
• - 空虚重量: 6,750 kg
• - 最高速度: マッハ2（計画値）
• - エンジン: SNECMA TF106 x1
• - 出力: 78.14 kN
• - リフトエンジン: ロールス・ロイス RB.162 x8
• - 出力: 19.6 kN × 8
• - 乗員: 1人

ミラージュIII Vは、その設計思想と試みが歴史に記憶される一方で、実用化には至らなかった戦闘機の一つとなりました。

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