ミレニアム囲い

ミレニアム囲い：将棋における独特の防御システム

ミレニアム囲いは、将棋の振り飛車戦法に対して居飛車側が用いる囲いのひとつです。その名称は、2000年頃を境にプロ棋士の間で意識的に指されるようになったことに由来します。三浦囲い、かまくら囲い、蒲鉾囲い、トーチカなど、様々な呼び名を持つこの囲いは、独特の玉の配置と戦術的な特徴から、将棋界で長く議論の的となっています。

歴史と変遷

ミレニアム囲いがプロの棋戦で用いられるようになったのは、三浦弘行八段が先鞭をつけたのが始まりとされています。三浦八段自身は、この囲いの発祥を中村修九段に帰しているという興味深いエピソードも残されています。2001年の名人戦では、丸山忠久名人（当時）もこの囲いを採用しており、その注目度は高く、三浦八段は同年の将棋大賞升田幸三賞を受賞しています。

しかし、ミレニアム囲いの歴史は、プロ棋士だけの活躍によるものではありません。ネット上のアマチュア棋士の間でも「西田スペシャル」という名称で知られており、プロ棋界に導入される以前からその存在は認知されていたようです。

藤井システムが台頭した時代、ミレニアム囲いは居飛車穴熊と比べ、角や桂馬による玉への攻撃を許しにくいことから、有力な対抗策として注目を集めました。しかしながら、その構築には多くの手順を要する割には穴熊ほど堅牢ではなく、振り飛車側が穴熊に組み替える対応も有効でした。そのため、藤井システムへの完全な対抗策とはなり得ませんでした。さらに、居飛車穴熊や急戦など、藤井システムへの効果的な対抗策が確立したこともあり、2006年以降はプロ棋戦での採用は減少しました。

しかし、2018年頃から再びミレニアム囲いの使用が増加しています。これは、藤井システムとは無関係に、左桂を積極的に攻めに活用できる囲いという新たな評価が定着しつつあるためです。さらには、振り飛車側がミレニアム囲いに対応する新しい戦法も開発されており、この囲いは現代将棋においても、進化を続けていると言えます。

特徴と戦術

ミレニアム囲いは、玉将を左桂馬の位置に配置し、金将や銀将3枚または4枚で堅牢に囲うのが特徴です。堅さにおいては穴熊囲いよりは劣るとされますが、串カツ囲いと同等、美濃囲いよりは堅いと言われています。

穴熊囲いとの大きな違いは、玉将の位置が相手の角筋から外れていること、そして左桂を攻めに活用しやすい点にあります。これは、菊水矢倉と共通する特徴でもあります。端の防御という観点では、串カツ囲いが銀と桂で守るのに対し、ミレニアム囲いは銀と香で守るという違いがあります。玉将を先手8筋（後手2筋）に置くため、端攻めに対する耐久性も備えています。しかし、穴熊囲いや串カツ囲いと比較すると、中央からの攻撃に対しては若干弱いとされています。

また、一段玉の形で自陣深く囲うため敵陣からは遠いですが、上部からの攻めには必ずしも強いとは限らない点が弱点です。穴熊囲いと比べ、一路中央に近いため、と金攻めにも弱さを露呈する可能性があります。そのため、上部からの攻撃に備えるため、より堅牢な陣形を作る工夫もプロ棋士によって研究されています。

ミレニアム囲いは、その独特の玉の配置と左桂の活用、そして時代に合わせて進化を続ける柔軟性から、将棋界において今後も重要な戦術として注目され続けるでしょう。

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