串カツ囲い

串カツ囲い：穴熊囲いの変種とその特徴

将棋の居飛車戦において、独特の陣形を築く囲いのひとつに「串カツ囲い（くしかつがこい）」があります。別名「端美濃囲い」とも呼ばれます。その名の通り、穴熊囲いと非常に類似した囲いですが、重要な違いが一つあります。それは、玉将と香車の位置関係です。

穴熊囲いでは、玉将が9九、香車が9八に配置されますが、串カツ囲いではこの配置が逆転します。9九に香車、9八に玉将が位置します。この配置から、まるで香車が玉将を串刺しにするかのような形に見えることから、「串カツ囲い」という名前が付けられました。

串カツ囲いのメリットとデメリット

串カツ囲いは、穴熊囲いと比較していくつかの利点があります。まず、横からの攻めに対して、玉将が上方に逃げやすいという点が挙げられます。また、角道を塞いでいるため、相手の角の攻撃をある程度抑制できます。そして何より、穴熊囲いよりも1手早く構築できるという点が大きなメリットです。

しかし、一方でいくつかの大きな欠点も存在します。最も深刻な問題は、香車が玉将の防御に全く貢献していない点です。玉将の守りに利かず、同時に香筋を止めているため攻撃にも参加できません。これは香車の特性を全く活かせていないことを意味し、特に端攻めに対しては非常に脆弱です。

さらに、穴熊囲いの最大の特徴である「王手がかからない形（ゼット）」も形成されません。そのため、相手の攻撃に対して受動的な姿勢を取らざるを得ない場面が多く、長所よりも短所が目立つ囲いであると言えます。

一度この囲いを構築すると、穴熊囲いに変更するには数手の手間がかかります。例えば、先手番であれば、▲7七銀、△後手、▲8八玉、△後手、▲9八香、△後手、▲9九玉、△後手、▲8八銀と最低でも9手（後手番では合計10手）を要します。他の囲い、例えばミレニアム囲いなどは、▲7七桂▲8九玉とわずか2手で構築できるため、状況に応じて囲いの選択は慎重に行う必要があります。

なお、9八玉の形は「米長玉」と呼ばれることもあります。

実戦例：タイトル戦での登場

串カツ囲いは、プロのタイトル戦でも実際に用いられています。一例として、2001年10月5日に行われた第49期王座戦五番勝負第3局、羽生善治王座対久保利明七段戦では、この囲いが登場しました。この対局では、△5五歩▲4五桂△5六歩▲2四歩△同歩▲同飛△同飛▲同角△5五角と進行し、串カツ囲いが用いられました。

まとめ

串カツ囲いは、穴熊囲いをベースとしながらも、玉将と香車の配置を逆転させた、特徴的な囲いです。素早い構築が可能というメリットがある一方、守備の脆弱性や攻撃への参加の難しさといったデメリットも抱えています。そのため、その特性を理解した上で、適切な局面で用いることが重要です。将棋における戦術の多様性を示す一例として、今後も研究が続けられる囲いと言えるでしょう。

もう一度検索