ミーアキャット

ミーアキャット (Suricata suricatta)

ミーアキャットは、哺乳綱食肉目マングース科スリカータ属に分類される食肉類で、本種のみでスリカータ属を構成しています。別名としてスリカータ、ミーアカットとも呼ばれます。

分布

ミーアキャットは、アフリカ南西部の乾燥地帯に生息しています。具体的には、アンゴラ南西部、ナミビア南部および西部、ボツワナ南西部、南アフリカ共和国北部および西部に見られます。模式標本の産地は喜望峰です。

形態

ミーアキャットの体長は25～31cm、尾長は17～25cmです。体重はオスで626～797g、メスで620～969g程度です。背中は長く柔らかい体毛で覆われていますが、腹部はまばらな短い体毛に覆われています。体色は黄褐色、灰褐色、灰白色などで、背中には暗褐色の横縞が10本ほど入ります。顔や喉は灰白色で、目の周りや耳は黒色をしています。尾の先端は黒く、基部は黄褐色です。

歯列は、門歯が上下に6本ずつ、犬歯が上下に2本ずつ、臼歯が上下に6本ずつ、大臼歯が上下に4本ずつ、合計36本です。四肢は細く、指の数は4本です。前足の爪は長く、1.5cmにも達し、後ろ足の爪の2倍以上の長さがあります。

オスのみ肛門の周辺に臭腺（肛門腺）があり、乳頭の数は6個です。

分類

ミーアキャットの亜種は、以下の通りに分類されています（Staaden, 1994）。

Suricata suricatta suricatta (Schreber, 1776): 南アフリカ共和国に分布。
Suricata suricatta iona Cabral, 1971: アンゴラに分布。
Suricata suricatta marjoriae* Bradfield, 1936: ナミビアに分布。

生態

ミーアキャットは、石や岩の多い荒地やサバンナに生息する昼行性の動物です。寒暖差や大雨から身を守るため、地中に直径10cm、深さ1.5mほどの巣穴を掘って生活します。通常はペアや家族群で生活し、複数の家族群が一緒に生活することもあります。太陽に向かって尾を支えに直立し、体を温める習性があります。

食性は雑食で、昆虫、クモ、サソリ、多足類、爬虫類、鳥類、小型哺乳類、植物の茎、芽、根、果実などを食べます。

繁殖は、群れの中で一番強いオスとメスのみが行います。繁殖様式は胎生で、10月から翌4月にかけて交尾が行われ、妊娠期間は約11週間です。1回に2～5頭の幼獣を産み、子育ては両親を含む群れ全体で行います。授乳期間は約4～6週間で、幼獣は生後12～14日で開眼し、3～4週間で固形物を食べるようになります。生後10週間で独立し、生後9ヶ月で性成熟を迎えます。

群れには1組の優位なオスとメスがいて、このペアのみが繁殖活動を行います。群れの他のメンバーは基本的に繁殖せず、ヘルパーとして子守りや授乳を行います。また、ヘルパーが幼い子供たちに餌の捕り方を教える行動も観察されています。

天敵としては、セグロジャッカル、ラーテル、猛禽類などがいます。

人間との関係

ミーアキャットの英名「Suricata」は、南アフリカでの呼称に由来します。また、「Meerkat」という英名は、古い文献では「mierkat」とされており、これはアフリカーンス語で「シロアリ（mier）のマングース（kat）」を意味し、ミーアキャットが蟻塚の上で直立したり、シロアリを食べることに由来すると考えられています。和名については、以前は「スリカータ」とされていましたが、2018年に日本哺乳類学会が発表した標準和名では、動物園などの展示施設で定着している「ミーアキャット」が採用されました。

農地開発の影響やペットとしての流通も見られますが、種として絶滅のおそれがあるような脅威はないと考えられています。

ペットとして飼育する際は、野生の性質を受け継ぐため、オスは飼い主以外を認めず、発情期には攻撃的になることがあります。そのため、犬歯の抜歯や去勢手術、肛門腺の摘出手術などを事前に動物病院で行う必要があります。

日本では、1976年に日本平動物園が飼育下繁殖に成功しました。富山市ファミリーパークでは、1985年から1991年までに4回の繁殖に成功しています。一方、飼育下では複数のペアで飼育すると、特にメス同士が激しく闘争し、全滅した例もあります。

ミーアキャットは、その愛らしい姿と社会的な行動から、多くの人々に親しまれています。

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