ミール・カーシム

ミール・カーシムの生涯と歴史的影響

ミール・カーシム（Mir Qasim、? - 1777年5月8日）は、1760年から1763年までベンガルの太守を務めた重要な政治家でした。彼の人生は、彼の地位を巡る権力争いとイギリス東インド会社との複雑な関係に彩られています。

太守になるまでの背景

ミール・カーシムの生誕年は不詳ですが、彼の父はミール・ラーズィー・ハーンであり、彼の祖父はグジャラート太守を務めたインティアーズ・アリー・ハーンです。彼の前半生に関する記録は多くありませんが、やがてミール・ジャアファルの娘ファーティマ・ベーグムとの結婚を果たします。

彼の名は1757年に知れ渡り、当時ベンガル太守の地位を巡る対立が始まったことがきっかけでした。ミール・ジャアファルは劣勢にあり、ミール・カーシムは兵士たちを鎮圧するために金銭を提供するなど、影響力を強めていきます。

1760年の初め、彼は新しい太守の位置を得るために、ミール・ジャアファルと密かに交渉を進め、実権を握る副太守としての道を歩み始めました。まもなくして、彼は新たなベンガルの太守となりますが、その背景にはイギリス東インド会社との様々な契約や金銭的義務がありました。

イギリスとの軋轢

ミール・カーシムは、自身の地位を確立するために巨額の賠償金をイギリスに支払う必要がありました。このことは彼にとって大きな負担となり、彼はザミーンダール（地元の土地所有者）から金銭を徴収する強権的な手段を取らざるを得なくなります。この徴収は、長年イギリスに対する反発を抱えていたザミーンダールとの関係を悪化させ、いくつかの反乱を引き起こしました。

その一方で、彼は自らの独立を目指し、軍の改革や兵器の近代化に取り組みます。これにより、彼は軍事力を強化してイギリスに対抗しようと試みました。さらには、隣国ネパールに侵攻するも領土を維持できない結果に終わるなど、イギリスとの関係はますます緊張を増していきました。

抗争の激化

1763年には、イギリス側の特権拡大が問題となり、彼は方向性を模索していくことになります。地元商人の利益を守るために、新たに設定した関税体制の改善を求めましたが、イギリス側はこれに対し無視を続け、状況はエスカレートしていきます。さらに、イギリス側が行った挑発行為もあり、双方の対立が暴力的なものへと変わっていきました。

エリスという工場長が、ミール・カーシムの拠点を攻撃した際、彼は直ちに反撃し、パトナの工場を壊滅させます。この戦闘により、彼とイギリスとの緊張はついに決定的な局面を迎え、ミール・カーシムは一連の戦争に至ります。

ブクサールの戦いとその後

1764年、ミール・カーシムはアワド太守と協力し、再びイギリスに対抗するための軍事行動を起こしますが、ブクサールの戦いでは惨敗を喫します。給金未払いの兵士や内通者の存在が彼の軍の士気に影響を与え、戦の結果は悲劇的でした。この敗北を受けて、彼はアワドのシュジャー・ウッダウラの保護を求め逃れます。

その後、彼は再び不遇に見舞われ、投獄された後も放浪し続けました。最終的には、囚われの身から解放されても、その生活は困窮に満ちたものでした。1777年5月、彼はデリー近郊で亡くなりますが、彼の葬儀に関しては、彼の衣服を売る必要があったほど困窮していたと言われています。

結論

ミール・カーシムの人生は、イギリスとの抗争や権力者同士の陰謀に彩られた歴史の一部です。彼の物語は、インド史における力の移行と複雑な政治状況を映し出しています。

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