ムカデ人間

『ムカデ人間』：衝撃的な人体実験と人間の業を描いたホラー[[映画]]

2010年公開のトム・シックス監督によるホラー[[映画]]『ムカデ人間』(原題：The Human Centipede (First Sequence))は、その過激な描写と衝撃的なストーリー展開で世界中に衝撃を与えた作品です。本作は3部作の第1作目であり、続編である『ムカデ人間2』、『ムカデ人間3』とは世界観が異なります。

猟奇的な着想とナチスへの言及

監督のトム・シックスは、本作のアイデアの発端について、犯罪者の口と肛門を縫い合わせるというジョークから着想を得たと語っています。舞台をドイツにしたのは、ナチスの医師を想起させるためだと明かしており、作品に暗い影を落としています。影響を受けた作品としては、パゾリーニ作品やデヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』、『クラッシュ』などを挙げています。

撮影秘話と個性的なキャスト

オランダ郊外での撮影では、俳優たちの激しい演技により、近隣住民から苦情が寄せられるというハプニングもあったそうです。

ムカデ人間の一人であるカツロー役の北村昭博氏は、ロサンゼルス在住の日本人俳優です。当初予定されていた俳優の都合により急遽代役としてオーディションを受け、見事合格しました。脚本にはカツローの背景がほとんど書かれていなかったため、北村氏はメソッド演技の概念に基づき、YouTubeで話題となっていた亀田史郎氏とやくみつる氏の口論動画から着想を得て、関西弁を話すヤクザというキャラクターを独自に創造しました。台詞も監督との相談の上で自ら考案しており、博士を罵るシーンなどは北村氏のアイディアによるものです。当初は恐怖に怯えるだけの役どころでしたが、北村氏の提案により、より反抗的なキャラクターへと変更されました。また、日本語吹き替え版では、北村氏の希望で声優の三宅健太氏が起用されています。

衝撃的なストーリー展開

アメリカ人女性旅行者リンジーとジェニーは、車のトラブルでドイツ人医師ハイター博士の邸宅に助けを求めます。一見親切な博士ですが、彼は人間の口と肛門を繋ぎ合わせるという邪悪な計画を企てていました。リンジー、ジェニー、そして既に捕らえられていたカツローの3人を、博士はムカデ人間にしようとします。

3人は抵抗しますが、麻酔によって抵抗を封じられ、残酷な手術によって結合されてしまいます。博士は完成したムカデ人間を満足げに観察し、飼育します。しかし、最後尾のジェニーが病気になり、博士は新しい被験者を捜索します。

リンジーとジェニーの捜索に来た警官が博士の邸宅を訪れます。博士はムカデ人間を隠匿しようとしますが、警官の追及を受け、銃撃戦となります。その混乱の中、ムカデ人間たちは脱出を試みますが失敗し、先頭のカツローは絶望のあまり自害します。その後、博士と警官は相討ちとなり死亡し、ジェニーも病死。物語は、絶望的な状況に置かれたリンジーの悲鳴で幕を閉じます。

登場人物

ヨーゼフ・ハイター博士: 元シャム双生児分離手術の名医。極度の人間嫌いで、ムカデ人間を作りたいという邪悪な願望を持つ。
リンジー: ムカデ人間の真ん中にされたアメリカ人女性。唯一の生存者だが、生死不明。
ジェニー: ムカデ人間の最後尾にされたアメリカ人女性。病気で死亡。
カツロー: ムカデ人間の先頭にされた日本人男性。関西弁を話すヤクザ。自害。
* クランツ刑事、フェラー刑事: リンジーとジェニーの捜索に来た警官。博士と銃撃戦になり死亡。

日本での公開と派生作品

日本では、当初DVDのみの発売予定でしたが、口コミで話題を呼び、劇場公開も決定しました。日本語吹き替え版では、若本規夫氏がハイター博士の声を担当しています。また、日本オリジナルの漫画版『ムカデ人間∞ 最終解脱』も存在します。

その他

カツロー役の北村昭博氏は、本作の出演がきっかけで『HEROES』のファイナルシーズンに出演しています。ハイター博士の名前は、実在したナチスドイツの医師から着想を得ています。

『ムカデ人間』は、その過激な描写と衝撃的なストーリー展開、そして人間の業を深く描いた作品として、多くの議論を呼びました。その衝撃的な内容は、観る者の心に深い爪痕を残すことでしょう。

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