ムシュマッヘ

ムシュマッヘは、古代メソポタミア神話に登場する蛇の怪物です。シュメール語では「MUŠ.MAḪ」、アッカド語では「muš-ma-ḫu」と記述され、「傑出したヘビ」という意味を持ちます。

その姿は一定ではなく、蛇とライオンと鳥が合わさったキメラのような姿で表現されることもあれば、7つの頭を持つ巨大な蛇として描かれることもあります。神話における役割も様々で、シュメール神話では英雄神ニヌルタによって倒される怪物として登場します。

ムシュマッヘは、バスム（Bašmu）、ウシュムガル（Ušumgallu）といった他の蛇の怪物と関連付けられることもあります。これらの怪物は、3つの角を持つ蛇のグループとして描写されることがあり、共通の神話的起源を持つと考えられています。

ニヌルタのニップル帰還をテーマにした叙事詩『アンギム』には、嵐の神が持つ武器の一つとして「七つの口を持つムシュマッヘ」が登場します。これは、ギリシア神話に登場するヒュドラーを彷彿とさせる描写です。また、初期王朝時代の貝殻には、ニンギルス神が7つの頭を持つムシュマッヘを打ち倒した場面が刻まれています。

バビロニアの創世叙事詩『エヌマ・エリシュ』においては、原初の女神ティアマトが生み出した怪物の中にムシュマッヘが含まれています。この叙事詩では、ムシュマッヘは「鋭い歯と残忍な牙を持ち、血液の代わりに毒液が体内を流れている」と描写されており、恐るべき存在として描かれています。

このように、ムシュマッヘは古代メソポタミア神話において、様々な姿と役割を持つ怪物として登場し、人々に畏怖の念を抱かせていたと考えられます。

関連語句:

ニヌルタ: 古代メソポタミアの英雄神。ムシュマッヘを倒したと伝えられています。
ティアマト: バビロニア神話における原初の女神。多くの怪物を生み出しました。
* ズー: 巨鳥。時にニヌルタによって殺されたと語られます。

もう一度検索