ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ

ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ（MPB）とは

ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ（Música Popular Brasileira, MPB）は、直訳すると「ブラジリアン・ポピュラー・ミュージック」を意味し、1960年代後半、ボサノヴァの隆盛後に登場したブラジルのポピュラー[[音楽]]の主要なジャンルの一つです。この音楽形式は、ロックミュージックが若者の間で広く受け入れられるようになった時代に、テレビ音楽番組を通じて大衆に広まりました。

MPBの誕生と初期の動向

MPBの初期は、世界的なロックの流行がブラジルに影響を与えた結果として生まれました。1950年代後半から1960年代前半にかけてブラジル音楽の主流であったボサノヴァは、都会的で洗練された音楽として評価される一方で、ヨーロッパ白人中心主義の象徴とも見なされ、その反動として若者たちはエレキギターのサウンドに刺激を求めました。しかし、MPBは単にロックを模倣するのではなく、ブラジルのアイデンティティであるサンバなどの伝統音楽の要素を取り入れ、ロックンロールとブラジル独自の音楽的感性を融合させた様々なスタイルを生み出しました。

1960年代には、ビートルズの世界的ブームがブラジルにも波及し、エレキギターブームが到来しました。多くのグループサウンズが登場し、特に「JOVEM GUARDA」という若者向けテレビ番組が、ロベルト・カルロス、エラスモ・カルロス、ワンデルレーアの3人を中心に大流行しました。この番組は、若者の音楽、ファッション、話し方まで影響を与え、出演した多くのアーティストたちがヒットチャートを席巻し、ボサノヴァの人気は次第に衰退していきました。主な出演者には、Jerry Adriani、Trio Esperança、Golden Boys、Wanderley Cardoso、Antônio Marcos、Rosemeire、The Fevers、Os Incríveis、Os Vips、Sérgio Reis、Jorge Ben、Martinhaなどが挙げられます。

トロピカリズモ運動とMPBの発展

「反戦」や「ロック」、「ヒッピー」といった世界的な音楽的潮流がブラジルに伝わると、カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルなどの若い音楽家たちが、いち早く反応し、トロピカリズモ運動がMPBの起源となりました。この運動は、単なるロックの受容に留まらず、脱植民地化やブラジル独自のアイデンティティの確立を目指し、伝統音楽と現代音楽の融合を積極的に試みました。その結果、MPBはロックを基盤としながらも、1960年代以降に流行したほぼ全ての音楽を包括する広範なジャンルとなりました。

MPBの国際的な認識

アメリカ、イタリア、スペイン、フランスなどでは、MPBはラテンポップのカテゴリーに含まれると解釈されています。しかし、日本ではラテンポップというとスペイン語圏の音楽を指すことが多く、ブラジルは南米で唯一ポルトガル語圏であるため、MPBはラテンポップに含まないとする見方も存在します。

MPBの代表的なアーティスト

MPBを代表するアーティストは非常に多様です。以下に代表的なアーティストを挙げます。

イヴァン・リンス (Ivan Lins)
エラスモ・カルロス (Erasmo Carlos)
エリス・レジーナ (Elis Regina)
カエターノ・ヴェローゾ (Caetano Veloso)
ガル・コスタ (Gal Costa)
サンディ (Sandy)
シコ・ブアルキ (Chico Buarque)
ジャヴァン (Djavan)
ジョアン・ボスコ（João Bosco）
ジョイス (Joyce)
ジョルジ・ベンジョール (Jorge Ben Jor)
ジルベルト・ジル (Gilberto Gil)
ノーヴォス・バイアーノス(Novos Baianos)
ホベルト・カルロス (Roberto Carlos)
ミルトン・ナシメント (Milton Nascimento)
マルコス・ヴァーリ (Marcos Valle)
マリア・ベターニア（Maria Bethânia）
ムタンチス（Mutantes）
メリッサ・クニヨシ (Melissa Kuniyoshi)
ワンデルレーア　(Wanderléa)

参考文献

MPBに関する理解を深めるための参考文献として、以下があります。

マリア・ドロレス(Maria Dolores)著、荒井めぐみ訳『ミルトン・ナシメント “ブラジルの声”の航海（トラヴェシア）』DU BOOKS、2019年4月5日。
クリストファー・ダン著、国安真奈訳『トロピカーリア ブラジル音楽を変革した文化ムーヴメント』 音楽之友社、2005年。

外部リンク

* 『ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ』 - コトバンク

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