ムドロス休戦協定

ムドロス休戦協定の概要

ムドロス休戦協定（Armistice of Moudros）は、1918年10月30日に連合国とオスマン帝国との間で署名された重要な文書です。この協定は、第一次世界大戦における中東戦線の戦闘を終結させるもので、連合国の勝利によるオスマン帝国の敗北を意味しました。

休戦の背景

休戦協定の締結は、オスマン帝国が捕虜としていたイギリス陸軍のチャールズ・タウンゼンド少将をムドロス港に派遣したことから始まりました。この行動が停戦に向けた公式な協議のスタートとなりました。当時、イギリスとフランスの間ではエーゲ海における艦隊の指揮を巡って対立があり、フランスが独自行動を取っていた影響もあり、イギリスのゴフ＝カルソープ提督が中心となって交渉が行われることになりました。

休戦協定の内容

協定の第25条により、戦闘は10月31日正午に終わることが定められました。オスマン帝国は、アナトリア半島外の要塞を明け渡し、ダーダネルス海峡やボスポラス海峡を管理する権利を連合国に認めることとしました。また、連合国は、無秩序が発生した場合にオスマン帝国の領土の一部を占領する権利も得ました。この協定では、オスマン帝国の軍隊が武装解除され、重要な港湾や鉄道に対する使用権が連合国に与えられました。さらに、カフカス地域ではオスマン帝国軍が以前の国境まで撤退することが求められました。

この協定はオスマン帝国とイギリスの間で結ばれたものですが、多くの条項は事前に連合国の会議で合意された内容でした。ただし、最終的な条文には重要な修正が含まれていました。特に、オスマン帝国軍は当初要求されたキリキアからの即時撤退が免除され、さらに「連合国の安全が脅かされた場合」の文言が追加されました。この追加により、オスマン帝国内の混乱に対処できる権限が連合国に与えられ、ロシア内戦への介入のための足がかりともなりました。

締結後の影響

ムドロス休戦協定締結後、英仏伊の連合軍がイスタンブールを占領したことは、市民や政府に衝撃を与えました。この出来事はオスマン帝国の国土を占領する初めの一歩で、列強によるオスマン帝国の分割が着々と進められることとなりました。1920年には、休戦協定を基にしたセーヴル条約が結ばれ、オスマン帝国は列強、ギリシア、そして新たに独立するアルメニアやクルディスタンによって分割されることが決まりました。

これに対し、トルコ独立戦争（希土戦争）が勃発し、結果としてオスマン帝国は崩壊しました。新たに建国されたトルコは領土を回復し、1923年7月24日には西欧諸国とローザンヌ条約を締結して国際的な承認を受けることとなります。

関連事項

ムドロス休戦協定は第一次世界大戦の重要な結果の一つであり、今後のトルコ共和国の形成に大きな影響を与えました。この歴史的な事件の背後には、戦争の終焉を求める各国の複雑な思惑が存在しており、国際関係の変化を深く理解するための重要なケーススタディとなっています。

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