ムナグロ

ムナグロ（胸黒）

ムナグロ（学名：Pluvialis fulva）は、チドリ目のチドリ科に属する鳥類です。一般に「胸黒」とも呼ばれ、その名の通り、特に夏に特徴的な黒い腹を見せるのが印象的です。

分布

ムナグロはシベリアやアラスカ西部のツンドラ地域で繁殖します。その後、冬季には東南アジア、オーストラリア、インド、さらにはアフリカ東部などの温暖な地域へと渡ります。この渡りの期間には、日本にも旅鳥として春と秋のシーズンに姿を見せ、特に本州の中部以南では越冬する個体も存在します。更に南西諸島や小笠原諸島では、定期的に越冬する姿が見られます。

形態

ムナグロの全長は約24 cm、翼を広げると約60 cmにも達します。雌雄の外見は非常に似ており、成鳥の夏羽では顔から腹までが黒く、その周囲に白い縁取りがあります。背中は黄褐色と黒褐色の斑模様で装飾されています。一方、冬羽になると、体の下部は淡い黄褐色で、腹部も褐色がかった白色に変わります。嘴は黒色で、足は灰色がかった黒色です。幼鳥は成鳥の冬羽に似ていますが、全体に黄褐色が強く出ており、翼の下部は白っぽい特徴があります。

生態

ムナグロの繁殖は主に極地のツンドラで行われ、6月から8月にかけて行われます。つがいで生活し、縄張りを持って巣作りを行います。巣は地面の上に作られ、通常4つの卵を産みます。食性としては、主に動物食であり、昆虫類や甲殻類を捕食しますが、時には草原や田んぼで植物の種子を食べることもあります。また、渡りや越冬の際には、水田、草原、干潟、河原、そして河口など様々な場所に生息することが知られています。ムナグロは、体型が似ているダイゼンよりもやや乾燥した環境を好む傾向があり、特に越冬地では干潟や河原よりも畑や公園の芝生でよく見かけられることが多いです。飛んでいる時に「ピョピョー」や「キビョー」といった声で鳴く姿も観察されます。

種の保全状況評価

ムナグロは国際自然保護連合（IUCN）によって軽度懸念（LC）に分類されていますが、日本の複数の都道府県では特別な保護が求められています。具体的には以下のような評価がされています。

• - 絶滅危惧II類: 東京都（区部、北多摩、南多摩、西多摩）
• - 準絶滅危惧種: 京都府（春秋の渡りの際に姿を見せるが、近年個体数が減少）
• - 準絶滅危惧: 大阪府
• - 一般保護生物（D）: 千葉県（環境省の準絶滅危惧種に相当）
• - 減少種: 神奈川県（非繁殖期）

参考文献

• - 溪谷カラー名鑑『日本の野鳥』、山と溪谷社
• - 真木広造他　『日本の野鳥590』　平凡社
• - 叶内拓哉、安部直哉『山溪ハンディ図鑑7　日本の野鳥』（第2版）山と溪谷社、2006年
• - 中川雄三（監修）編『ひと目でわかる野鳥』成美堂出版、2010年

関連項目

• - アメリカムナグロ
• - ヨーロッパムナグロ
• - 日本の野鳥一覧

ムナグロはその独特な姿と行動から、多くの観察者に愛されている鳥です。日本でも見られる機会が多く、環境の変化によりその姿をしっかりと記録することも重要です。

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