ムハンマド・アーディル・シャー (スール朝)

ムハンマド・アーディル・シャーの生涯

ムハンマド・アーディル・シャーは、北インドのスール朝における第4代の君主であり、その治世は1554年から1555年までの短い期間にわたりました。彼はスール朝の創始者シェール・シャーの弟、ニザーム・ハーンの子供として生まれましたが、その生年は不詳です。

王位の継承と内乱の勃発

1554年11月、前王イスラーム・シャーが死去し、新たにフィールーズ・シャーが王位を継承しました。しかし、フィールーズ・シャーは即位からわずか1ヶ月足らずで、従兄のムハンマド・アーディル・シャーによって暗殺され、王位を奪われることとなります。この急激な変化により、スール朝内では内乱が勃発し、政治的な混乱が広がりました。

この混乱を収拾するために、アーディル・シャーは前任者から注目を集めていたヘームーを宰相、また軍の総司令官に任命しました。ヘームーは数多くの戦闘で一度も敗北を経験していなかった実力派です。

反乱と戦争

1955年には、アーディル・シャーの姉妹の夫であるイブラーヒーム・シャーが反乱を起こし、彼の軍を打ち破りデリーを占拠しました。しかし、イブラーヒーム・シャーもまた、後にシカンダル・シャーによってデリーから追い出されてしまいます。

一方で、アーディル・シャーは東部の領土を支配していましたが、デリーを追われたイブラーヒーム・シャーが再び進入してきました。しかし、イブラーヒーム・シャーはヘームーの率いる軍隊によって、カールピーとカーンワーの戦いで二度にわたって撃退され、最終的には巴屋ナールの城に逃げ込みます。

その後、ベンガルの支配者であるムハンマド・ハーン・スーリーがカールピーに近づいてきたため、ヘームーはバヤーナーの包囲を解くために呼び戻されます。アーディル・シャーはムハンマド・ハーンをカールピー近郊のチャッパルガッタで打ち負かし、彼を殺害しました。

アーディル・シャーはチュナールを首都とし、チュナールからベンガル国境までを支配しました。そして1556年には、ヘームーに命じてムガル帝国を北インドから排除する遠征へ向かわせることにします。

ヘームーの勝利とその後の運命

同年の10月、ヘームーは激闘の末にデリーを占領することに成功しましたが、11月にはパーニーパットでムガル帝国軍と対峙します。彼は圧倒的な軍事力を保っていたものの、戦いの中で敗北し、命を落とすという悲劇的な結果となったのです（この戦いは「第二次パーニーパットの戦い」として知られています）。

その後の1557年、アーディル・シャーはムハンマド・ハーンの息子であるヒズル・ハーン・スーリーと戦うも敗北し、戦死してしまいます。このように、彼の治世は内乱と戦闘に満ちた短いものであり、歴史の中で波乱万丈な存在として記憶されています。

脚注と参考文献

• - サティーシュ・チャンドラ、『中世インドの歴史』（山川出版社、2001年）。
• - フランシス・ロビンソン、『ムガル皇帝歴代誌』（創元社、2009年）。

関連項目

• - スール朝

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