ムハンマド・ハーシム・ハーン

ムハンマド・ハーシム・ハーン（1884年 - 1953年）は、アフガニスタンの政治史において重要な役割を果たした人物です。彼は、ムハンマド・ナーディル・シャーの異母弟であり、ナーディル・シャーが王位に就く上で大きな貢献をしました。1929年から1946年までの17年間、アフガニスタンの首相として国政を担いました。

生い立ちと初期のキャリア

ハーシム・ハーンは、ザーヒル・シャー国王の叔父にあたるユースフ・ハーンの息子として生まれました。彼は、若くして政治の世界に足を踏み入れ、1907年にはハビーブッラー・ハーン国王の警護隊長を務めました。その後、1916年にはヘラート総督、1919年にはジャラーラーバード知事、1920年には東部州知事と、地方行政の要職を歴任しました。これらの経験を通じて、彼はアフガニスタンの政治情勢や社会構造に対する深い理解を培いました。

政治的転換期とナーディル・シャーとの連携

1922年から1924年にかけて国防相を務めた後、1924年3月から1926年7月3日まで駐ソビエト連邦大使として活動しました。1926年7月にはフランスに渡り、兄であるナーディル・シャーの側近として行動を共にしました。この時期は、アフガニスタン国内の政治情勢が不安定化していた時期であり、ハーシム・ハーンはナーディル・シャーと共に帰国し、王位獲得のための活動に尽力しました。

1929年2月、ハーシム・ハーンはナーディル・シャーと共にアフガニスタンに帰国し、その後の政変において重要な役割を果たしました。同年11月、カーブルを奪取した後、彼は首相兼内務大臣に任命され、アフガニスタンの政治の中心人物となりました。1929年11月14日から1946年5月まで、彼は首相として国政を統括しました。

首相としての治世

ハーシム・ハーンが首相を務めた17年間は、アフガニスタンにとって重要な時期でした。彼は、ナーディル・シャーの治世を支え、国内の安定と近代化を推進しました。彼のリーダーシップのもと、インフラ整備や教育改革など、様々な分野で進展が見られました。しかし、その一方で、政治的な反対勢力に対する弾圧も行われました。彼の政治手法は、時に強硬と批判されることもありましたが、アフガニスタンの政治的安定に貢献したことは否定できません。

引退と晩年

1946年、ハーシム・ハーンは病気を理由に首相を引退しました。独身であった彼の引退は、アフガニスタン政界に大きな変化をもたらしました。彼の死後も、彼が築いた政治基盤は、アフガニスタンの歴史に大きな影響を与え続けました。


ムハンマド・ハーシム・ハーンは、アフガニスタンの政治史において、非常に重要な役割を果たした人物です。ナーディル・シャーの王位獲得を支え、長きにわたり首相として国政を担った彼の功績は、今日においても高く評価されています。彼の生涯は、アフガニスタンの近代史を理解する上で、欠かすことのできない重要な要素です。

もう一度検索