ムハンマド・ナーディル・シャー

ムハンマド・ナーディル・シャー

ムハンマド・ナーディル・シャー（1883年4月10日 - 1933年11月8日）は、アフガニスタンの国王であり、その治世は激動の時代でした。彼はパシュトゥーン人のバーラクザイ朝の分家出身であり、アマーヌッラー・ハーン追放後の混乱を収拾し、バーラクザイ朝を再興した重要な人物です。

生い立ちと前半生

ナーディル・シャーは、1883年4月10日にイギリス領インドのデヘラードゥーンで誕生しました。父はムハンマド・ユースフ・ハーン、母はシャラフ・スルタナです。彼の家系は、バーラクザイ朝のムハンマドザイ家の分枝であるムサーヒバーン家で、曽祖父はバーラクザイ朝の初代君主ドースト・ムハンマド・ハーンの弟スルタン・ムハンマド・ハーンでした。母方の曽祖父は、ドースト・ムハンマド・ハーンによって王位を追われたサドーザイ朝最後の王アイユーブ・シャーです。

1917年には軍総司令官となり、1920年から1924年までアマーヌッラー・ハーンの治世下で国防相を務めました。その後、一時フランスに滞在しましたが、アマーヌッラーに対する反乱が勃発すると、1929年2月にアフガニスタンに帰国しました。反乱指導者のハビーブッラー・カラカーニーはカーブルを占領し、アマーヌッラーを退位させましたが、政情を安定させることができませんでした。1929年10月13日、ハビーブッラーは兄のシャー・ワリー将軍に王位を譲り、シャー・ワリーはすぐにナーディル・シャーに王位を譲りました。

治世

1929年10月15日、ナーディル・シャーはアフガニスタンの国王（アミール）として即位を宣言しました。元国王のアマーヌッラー・ハーンは、ナーディル・シャーの即位に対して祝辞を贈りました。1930年9月には、ロヤ・ジルガで彼の称号が承認され、その後、君主の称号をシャーに変更しました。

ナーディル・シャーの治世初期は、シャリーアが法律の基盤となり、原理主義的な傾向が強まりました。立法と宗教指示の執行を監督するウラマー会議（ジャマーアテ・ウラマー）が設置され、イスラム教で禁止された食品とアルコール類を取り締まるワジーラト・アル＝イフティサーブのような機関も設けられました。

しかし、1931年に新憲法が採択されると、原理主義的な政策は一旦終結しました。新憲法は、イスラム教スンナ派ハナフィー学派を国教として定め、義務教育をウラマー階級に委ね、選挙権を男性のみに付与しました。この憲法は、社会の安定と近代化を目指すものでしたが、同時に伝統的なイスラムの価値観も重視するものでした。

暗殺とその後

ナーディル・シャーの治世は、反ハザーラ人政策のためハザーラ人の反感を買い、1933年11月8日、ハザーラ人のアブドゥル・ハリークによって暗殺されました。彼の死は、アフガニスタンに再び混乱をもたらし、その後の政治情勢に大きな影響を与えました。

ナーディル・シャーは、アフガニスタンの激動の時代を生き、国の再建に尽力しましたが、その治世は常に困難を伴いました。彼の生涯は、アフガニスタンの複雑な歴史を理解する上で重要な要素の一つです。

関連項目

グレート・ゲーム
ムハンマド・ハーシム・ハーン - 異母弟。

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