ムーテイイチ

ムーテイイチ：障害競走界の星と、その血脈

ムーテイイチは、1972年度の最優秀障害馬に選出された名馬として知られています。その競走生活は、平地競走での苦戦から始まり、転機は障害競走への転向でした。4歳秋に転向すると、その才能が開花。転向初戦から圧勝し、デビュー年度は5戦4勝という素晴らしい成績を残しました。

古馬となったムーテイイチは、春のシーズンはやや不調に陥りますが、秋シーズンに入ると見違えるように活躍します。オープン戦を勝利で飾り、挑んだ阪神障害ステークス（秋）で重賞初制覇を達成。続く京都大障害（秋）も制し、秋シーズンは4戦全勝という驚異的な成績で締めくくりました。

この年の最優秀障害馬選考では、中山大障害（春）優勝馬ナスノセイランが得票数で上回っていましたが、選考委員会はムーテイイチの活躍を高く評価し、全会一致で最優秀障害馬に選出しました。

6歳となったムーテイイチは、春に3戦した後、レコードタイムでの勝利を収め、競走馬生活に幕を閉じました。その後は、馬主である上田清次郎氏経営の上田牧場で繁殖牝馬となりました。

繁殖牝馬としては目立った活躍はありませんでしたが、その血脈は意外な形で花開きます。孫にあたるブゼンキャンドルは、平地競走のGIレースである秋華賞を制覇。ムーテイイチは、自身は障害競走で活躍したものの、GI優勝馬を送り出すという偉業を孫を通して達成することとなりました。このブゼンキャンドルの活躍は、2001年に廃業した上田牧場にとって、最後の輝かしい成果となりました。

ムーテイイチの血統には、障害競走で活躍した馬が多く含まれています。母の全弟には、中山大障害（春）など重賞3勝のハクオー、京都大障害優勝馬のイチイチがいます。また、半姉ミスハーキュリーの仔には、中京記念優勝馬ゼットアローがいます。

ムーテイイチの生涯は、平地競走での苦戦から始まり、障害競走への転向によって開花した才能、そして繁殖牝馬としての貢献、そして孫のGI制覇という、ドラマチックな物語でした。その活躍は、日本の競馬史に確かな足跡を残しています。 彼女の血統背景と競走成績は、日本の障害競走の歴史において重要な役割を担っていると言えるでしょう。 また、上田牧場における最後の活躍馬としての役割も、ムーテイイチの生涯を語る上で重要な要素となっています。

参考資料：

『優駿』2000年2月号 p.52-55「秋華賞馬ブゼンキャンドルの故郷 上田牧場」
『優駿』1973年2月号 p.16「昭和47年度代表馬・各最優秀馬選出」
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