メアリー・アデレード・オブ・ケンブリッジ

メアリー・アデレード・オブ・ケンブリッジ（1833年11月27日 - 1897年10月27日）は、ケンブリッジ公アドルファスと妃オーガスタの末娘として、ハノーファーで誕生しました。洗礼名はメアリー・アデレード・ウィルヘルミナ・エリザベス。父がハノーファー副王であったため、幼少期はハノーファーで過ごしました。幼い頃から食欲旺盛で、その肥満体型から「ふとっちょのメアリー」というあだ名で呼ばれることもありました。

1837年、伯父のウィリアム4世が崩御すると、イギリス王位は従姉のヴィクトリアが継承し、ハノーファー王位は伯父アーネスト・オーガスタスが継承することになりました。これにより、ケンブリッジ公一家はイギリスへ帰国し、ケンジントン宮殿に居を構えました。

30歳を過ぎても独身であったメアリー・アデレードは、自身の魅力のなさや経済状況から結婚適齢期を逃していました。また、王族としての身分も、結婚の相手を限定する要因となっていました。従姉のヴィクトリア女王は彼女を案じ、政略結婚の相手を探しました。

その結果、ヴュルテンベルク王家出身のテック公フランツ・パウルが結婚相手の候補として選ばれました。テック公は貴賤結婚により王位継承権はなかったものの、公爵の爵位を持っていました。メアリー・アデレードよりも身分が低い相手ではありましたが、他に候補者がいなかったこともあり、結婚を決意しました。1866年6月12日、二人はキュー教会で結婚式を挙げました。

結婚後、メアリー・アデレードは夫に殿下の称号を与えるようヴィクトリア女王に要請しましたが、これは却下されました。しかし、1887年のヴィクトリア女王即位50周年の式典の際に、夫に殿下の称号が与えられました。

テック公夫妻は、ロンドンでの生活費を避けるため、物価の安い外国での生活を選びました。これは、メアリー・アデレードが王族としての年金と、母親からの援助によって一家を支えていたためです。しかし、彼女は派手な生活を好み、パーティーや高価な食事、衣類の購入、海外旅行などで浪費を重ねました。

これにより、テック公一家は多額の借金を抱え、1883年には債権者から逃れるためにイギリスを離れました。一家はフィレンツェに旅行し、その後ドイツやオーストリアに滞在しました。当初はホーエンシュタイン伯夫妻という偽名を使っていましたが、より良いサービスを受けるために、王族の身分を明かしました。

1885年、一家はイギリスに帰国し、ホワイト・ロッジ荘に住みました。メアリー・アデレードは慈善活動、特に児童福祉活動に力を注ぎました。

1891年、メアリー・アデレードは長女のヴィクトリア・メアリー（愛称メイ）を、プリンス・オブ・ウェールズ（後のエドワード7世）の息子と結婚させたいと考えていました。ヴィクトリア女王は、将来の国王の妃にはイギリス生まれで、王族の血を引く貴族を選びたいと考えていましたが、ヴィクトリア・メアリーは基準を満たしていました。女王の承認を経て、ヴィクトリア・メアリーは王位継承権第2位のクラレンス公アルバート・ヴィクターと婚約しました。しかし、婚約からわずか6週間後にクラレンス公が急逝。女王の計らいで、ヴィクトリア・メアリーはクラレンス公の弟であるヨーク公ジョージ（後のジョージ5世）と婚約し、1893年に結婚しました。

ヴィクトリア・メアリーが王位継承者と結婚したことで、テック公家は幸運を掴みました。娘が将来の王妃となることが約束されたのです。しかし、メアリー・アデレードは娘が王妃となるのを見ることなく、1897年にホワイト・ロッジ荘で亡くなりました。遺体はウィンザー城内のセント・ジョージ礼拝堂に埋葬されました。

メアリー・アデレードとテック公フランツ・パウルの間には、以下の4人の子供がいました。

ヴィクトリア・メアリー・オーガスタ・ルイーズ・オルガ・ポーリン・クローディン・アグネス（1867年 - 1953年） - イギリス国王ジョージ5世妃
アドルファス・チャールズ・アレグザンダー・アルバート・エドワード・ジョージ・フィリップ・ルイス・ラディスローズ（1868年 - 1927年） - ケンブリッジ侯
フランシス・ジョゼフ・レオポルド・フレデリック（1870年 - 1910年）- テック公
アレクサンダー・オーガスタス・フレデリック・ウィリアム・アルフレッド・ジョージ（1874年 - 1957年） - アスローン伯 1904年にイギリス王女アリス・オブ・オールバニと結婚

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