メアリー・エドワーズ・ウォーカー

メアリー・エドワーズ・ウォーカー：南北戦争の女性軍医とその波乱の人生

メアリー・エドワーズ・ウォーカー (1832年 - 1919年) は、アメリカ合衆国史にその名を刻む、類まれな女性軍医です。南北戦争において勇敢に戦い抜き、女性として唯一名誉勲章を授与された人物として知られています。しかし、彼女の生涯は、医学への情熱、フェミニズム、そして時代の偏見との闘いの連続でした。

生い立ちと医学への道

ニューヨーク州で生まれたウォーカーは、教師として働きながら学資を貯め、1855年にシラキューズ医学大学を卒業。女性医師としての道を歩み始めます。夫であるアルバート・ミラーと共に開業しましたが、当時の社会では女性医師は敬意を払われず、成功は容易ではありませんでした。

南北戦争への参加

南北戦争勃発。ウォーカーは北軍への参加を志願します。女性軍医は存在せず、当初は看護師として従事。第一次ブルランの戦いなど、幾多の戦場を経験し、ワシントンD.C.の病院勤務や、前線に近い野戦地での無償の外科医活動も務めました。1863年、ついに女性初の合衆国陸軍軍医として正式に契約を結びます。

少軍医として、彼女はしばしば前線を越え、敵地においても民間人の治療にあたりました。その献身的な活動は、彼女の勇敢さと人道主義を如実に示しています。しかし、1864年、南軍に捕らえられ、スパイ容疑で逮捕・投獄されるという苦難を経験。捕虜交換で解放された後も、アトランタの戦いなどに参加し続けました。戦後には、ケンタッキー州ルイビルの女性捕虜収容所の監督やテネシーの孤児院院長を務めました。

名誉勲章とその後

戦後の1865年、ウォーカーは、シャーマン将軍とトーマス将軍の推挙により、名誉勲章を授与されます。その功績は、ブルランの戦いでの活躍のみならず、戦場と療養所双方での献身的な医療活動、そして南軍捕虜収容所での4ヶ月間の拘禁にも及びます。しかし、1917年、名誉勲章の授与基準が変更され、彼女は勲章の返還を命じられます。この決定に彼女は反発し、生涯、勲章を身に着け続けました。

彼女の死後、1977年、ジミー・カーター大統領によって、名誉勲章が正式に回復されました。これは、彼女の揺るぎない信念と、人道主義に基づいた行動への、国家による再評価と言えるでしょう。

フェミニストとしての活動

ウォーカーは、女性の権利擁護者、フェミニストとしても知られています。生涯の大半を男装し、女性の地位向上や健康、節制、服装改革といった問題について、ライターや講師として精力的に活動しました。

まとめ

メアリー・エドワーズ・ウォーカーの人生は、医学、戦争、フェミニズムという三つの要素が複雑に絡み合った、ドラマチックなものでした。彼女が示した勇気、献身、そして揺るぎない信念は、現代においても、私たちに多くの示唆を与えてくれます。彼女の功績は、単なる軍医としての枠を超え、女性の社会進出、人道主義、そして平和への貢献という、普遍的な価値を体現しています。彼女の名は、歴史に刻まれ、これからも多くの人々に記憶され続けるでしょう。

もう一度検索